家族の将来や相続問題を考えるうえで、「嫡出否認の訴え」は非常にデリケートかつ重要なテーマです。特に過去の結婚や子どもに関する情報が後から明らかになると、戸籍や法的な手続きに疑問や不安が生じることがあります。今回は「嫡出否認の訴え」について、費用や期間、必要な行動などを詳しく解説します。
嫡出否認とは何か?
嫡出否認とは、法律上「夫婦の婚姻中に生まれた子ども」を父親とする推定(民法772条1項)を覆すための制度です。これは、実際に父子関係がないと確信がある場合に限り、一定の期間内に家庭裁判所に訴えを起こすことが求められます。
たとえば離婚後2ヶ月後に子が出生していた場合でも、婚姻中に妊娠していれば、法的には元夫の子と推定されます。その推定を否定したい場合、嫡出否認の訴えが必要となるのです。
嫡出否認訴訟の申立期限と注意点
嫡出否認の訴えは、出生を知った時から「1年以内」に申し立てなければなりません。この期間を過ぎると、原則として否認は認められません(民法784条)。
ただし、長年経過していても「そもそも知らなかった」という正当な理由がある場合、家庭裁判所で例外的に受理される可能性もありますが、かなりハードルは高くなります。
費用の目安:弁護士なし・ありの場合
弁護士を雇わずに本人が手続きする場合、必要となる費用は次の通りです。
- 収入印紙代:1,200円程度
- 郵券(切手)代:1,000〜2,000円程度
- 戸籍謄本や住民票などの取得費用:数百円〜1,000円
合計でも5,000円未満で済むことが多く、本人訴訟は可能です。一方で弁護士に依頼した場合は、着手金10万〜20万円、成功報酬10万円前後が相場となります。
手続きの流れと所要期間
以下は一般的な嫡出否認訴訟の流れです。
- 家庭裁判所への申立(必要書類提出)
- 裁判所からの呼出・調停・審理
- 判決・認定
- 戸籍修正申請
争いがない場合でも、1〜3か月ほどかかることが多いです。争いがあったり、相手方の協力が得られない場合は半年以上かかることもあります。
相続や子どもの権利に影響する可能性
嫡出否認をしないままでいると、その子どもは「法的に夫の子」とみなされ続けます。結果として、あなたとの間の子どもと同等に相続権を持ちます。もし相続を巡るトラブルを避けたい場合、早期に嫡出否認を検討することが重要です。
たとえば、相続時に被相続人の子どもが2人とされていれば、それぞれ法定相続分は1/2になります。本来血縁関係がなかった場合でも、法律上は相続人として扱われてしまいます。
まとめ:家庭と将来のために今できること
嫡出否認の訴えは、本人でも比較的安価に行える手続きです。時間と手間はかかりますが、相続などの将来的なトラブル回避のためには非常に重要な措置となり得ます。もしご家族の同意が得られない場合でも、家庭裁判所での手続きは可能です。少しでも不安がある方は、法テラスなどの無料相談を利用し、専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。