事故現場での救助行動は加害者になる?第三者が車を動かした場合の法的リスクと注意点

交通事故の現場に遭遇し、車の下敷きになっている人を発見した場合、多くの人が助けたいという本能に駆られるでしょう。しかし、その善意の行動が思わぬトラブルを招く可能性があることをご存知でしょうか。本記事では、第三者が事故車を動かして救助行為を行った際に法的責任を問われる可能性について解説します。

第三者が事故車を動かす行為に法的リスクはあるのか?

原則として、事故に関与していない第三者が事故現場で被害者の救助を目的に行動した場合、「正当行為」(刑法第35条)として違法性が阻却される可能性が高いです。これは、人命を救助する行為が社会的に相当と認められるという法の考え方によるものです。

しかし、救助行為の際に過失があり、かえって被害を悪化させた場合には、過失による損害責任が発生することも考えられます。たとえば車を不適切に動かして重傷化させてしまったケースなどでは、責任の所在が争点になることがあります。

「緊急避難」や「正当行為」が成立する要件

刑法第37条では「緊急避難」について規定されています。これは、自身や他人の生命・身体を守るためにやむを得ず他人の権利を侵害した場合に適用されます。また、「正当行為」は社会通念に照らして相当と認められる行為に適用され、いずれも違法性が阻却されます。

たとえば「救急車が来るまでに車の下から救出しないと命に関わる」といった場合は、緊急避難に該当し、法的責任は問われない可能性が高いと考えられます。

救助行為による損害と責任の所在

仮に善意の救助行為によって被害者の状態が悪化した場合でも、状況次第では責任を問われないケースも多いです。裁判例では、救助行為が「相当性を持った緊急対応」であれば、民事上の賠償責任を否定する傾向があります

しかし、車の扱いに不慣れな人が安易に動かして状況を悪化させたような場合や、医療知識のない者が無理な救出を行ってしまった場合には、過失が問われることもあります。

通報と救助は分担することが望ましい

事故現場では、まず119番(救急)および110番(警察)への通報が最優先です。そのうえで、近くにいる他の人と協力しながら、安全に配慮して行動することが重要です。

特に車を動かす場合は、他人の車両を操作すること自体がリスクを伴う行為であるため、周囲の状況や被害者の状態、第三者の技能や経験に応じて判断する必要があります。

実際にあった類似のケースと判例

過去の判例では、善意で行った救助行為によって被害者に後遺症が残った場合でも、「結果回避のためにやむを得なかった」として違法性が否定されたケースもあります。一方で、明らかな不注意で被害を悪化させた場合には、民事責任が発生した例も存在します。

したがって、救助行為が社会的に合理的かつ必要なものであったかが重要な判断ポイントになります。

まとめ:助けたい気持ちを持ちつつ、冷静な判断を

事故現場で第三者が被害者を救助する行為は、法律上「正当行為」や「緊急避難」として認められる余地があります。しかし、実際に車を動かすなどの高度な判断が伴う行為では、結果に対する責任が問われる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。

万が一に備えて、自分の行動が「適切かつ必要だったか」を後から説明できるようにしておくことが、救助者自身を守ることにも繋がります。

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