自転車同士の事故において、交通ルールの違反が双方にあった場合、どちらの過失が重いかは一概には言えませんが、実際の事故状況に応じて法的判断が下されます。特にT字路のような交差点では、「左側通行違反」と「一時停止違反」が交差するケースで、過失割合に大きな影響を及ぼします。
交差点における自転車の基本ルール
自転車は「軽車両」に分類されるため、原則として車両と同じく左側通行が義務づけられています。また、交差点で一時停止の標識がある場合、自転車にも停止義務があります。これらは道路交通法に明記されており、違反した場合には過失責任が問われる可能性が高くなります。
つまり、左側通行を守っていなければ進行方向の予測が困難となり、事故回避が困難になります。一方で、一時停止を無視すれば、交差点内の優先順位を無視することになり、極めて危険な行為と評価されます。
過失割合はどう決まるのか
自転車事故の過失割合は、保険会社や裁判所が「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)」などをもとに判断します。交差点での事故では、一般的に以下のようなポイントが検討されます。
- 道路の幅員や見通し
- 信号や標識の有無
- どちらに優先権があったか
- 速度・注意義務違反の有無
たとえば、一時停止違反をした側には「停止義務違反」として20~40%程度の過失が加算されることが多く、左側通行違反の場合には15~30%程度の過失が加味されることがあります。
ケーススタディ:T字路での衝突例
実際の事例を挙げてみましょう。T字路において、直進していた自転車Aが一時停止を無視し、左側通行をしていなかった自転車Bと交差点で衝突したケース。
この場合、自転車A(停止義務違反)は本来停止して相手の通行を確認すべき義務があり、それを怠ったことが事故原因と見なされやすいため、より大きな過失が認定される可能性があります。ただし、自転車Bの左側通行違反も「本来走行しているべき場所にいなかった」という点で責任を問われることになります。
過失割合の例(仮定)
【仮定の過失割合】
・一時停止違反(自転車A):60%
・左側通行違反(自転車B):40%
※見通しの良し悪し、速度、道路状況により増減あり
なお、具体的な数値は個別事案の詳細に基づくため、あくまで一例です。
事故後の対応と証拠確保の重要性
自転車事故の場合も、事故現場の状況を記録することは非常に重要です。警察への通報、目撃者の連絡先、ドライブレコーダーやスマホでの記録などが、後の保険請求や過失割合の交渉に役立ちます。
また、自転車にも保険加入が義務化されている自治体が増えているため、事故の際には必ず保険会社に連絡し、必要な手続きを確認してください。
まとめ:違反の内容に応じて責任が変わる
左側通行違反と一時停止違反のどちらが重いかは、事故状況や道路状況、見通し、速度など複数の要素を総合的に見て判断されます。ただし、一般的には「一時停止違反」の方が重大とされ、過失割合が高くなる傾向にあります。
万一、こうした事故に巻き込まれた場合は、冷静に証拠を集め、保険会社や法的機関への相談をおすすめします。