2024年、P&Gジャパンの「ファブリーズ 防カビ」製品に関し、消費者庁が景品表示法違反(優良誤認)として措置命令を出したというニュースが話題となりました。「置くだけで浴室全体のカビ繁殖を防止する」という宣伝に合理的根拠がないと判断されたのです。こうした問題は果たして“詐欺”にあたるのでしょうか?本記事では、法的視点と消費者保護の観点からこの問題を解説します。
ファブリーズ防カビ表示問題の概要
消費者庁の発表によると、P&Gは2022年4月から2023年5月にかけて、自社の浴室用製品において「置くだけで浴室全体のカビを防げる」かのような表示を行っていました。これに対し、合理的な裏付け資料が不十分とされ、2024年7月1日付で景品表示法に基づく措置命令が出されています。
現在、当該商品は「カビ臭を防ぐ」という表示に変更されており、直接的な防カビ効果を示す文言は削除されています。P&Gは公式に謝罪文を公開し、再発防止に取り組むと表明しました。
景品表示法とは何か?詐欺との違いを理解しよう
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、事業者が商品やサービスについて過大または虚偽の表示を行い、消費者の選択を誤らせる行為を規制する法律です。違反があっても、直ちに「詐欺罪(刑法)」に問われるわけではありません。
一方、詐欺罪が成立するには「騙す意思」と「財物の交付を受ける行為」が必要です。景品表示法違反は行政処分が中心で、民事や刑事責任とは異なります。つまり、今回のケースは“詐欺”ではなく「不当表示」に該当するとされています。
消費者庁の措置命令とは何を意味するのか
措置命令は、表示の取り下げや再発防止策の実施などを企業に求める行政処分です。今回は、P&Gに対し「当該表示を今後行わないこと」「社内体制の改善」などが命じられました。
なお、違反企業には課徴金(売上の3%相当)が科される場合もありますが、今回は課徴金命令は確認されていません。
実際の消費者への影響と事例
「置くだけでカビが生えない」という印象を受けて購入した消費者は多く、SNSでも「効果がなかった」「信じて買っていた」といった声が見られます。特に、浴室のカビに悩む家庭では、高額でも効果を期待して購入していた可能性があります。
たとえば、ある主婦のケースでは「3ヶ月使ったがカビが出てきて、後から表示の根拠がなかったと知ってがっかりした」と投稿していました。
このような誤認表示に遭遇したらどうすればいい?
消費者ができる主な対応は以下の通りです。
- 消費生活センター(国民生活センター)に相談
- 景品表示法違反として消費者庁へ情報提供
- 重大な損害がある場合は民事請求(返金請求など)を検討
また、製品に不具合がある場合は、企業のカスタマーサービス窓口に直接問い合わせることも有効です。
まとめ:消費者の「知る権利」を守るために
今回のファブリーズの表示問題は、“詐欺”というよりも「不適切な広告表示」の典型例です。企業側の根拠なきPRが消費者に誤解を与えることは、たとえ意図的でなくとも重大な社会的責任を問われます。
私たち消費者も「表示内容を鵜呑みにしない」視点を持ち、必要に応じて正規機関に相談する姿勢が大切です。企業と行政、そして消費者がそれぞれの立場で健全な市場を築いていくことが求められています。