生命保険を受け取っていても遺留分請求できる?相続トラブルにおける正しい理解と判断基準

遺産相続では、「公平に分けられるはず」と思っていた内容が遺言書によって一方的に決まっていたというケースも少なくありません。特に、生命保険の扱いや遺留分の権利は誤解されやすいポイントです。この記事では、相続人が生命保険を受け取っていても他の相続人に対して遺留分請求ができるのか、法的な判断基準とともにわかりやすく解説します。

遺留分とは?基本的な制度のしくみ

遺留分とは、一定の相続人が最低限受け取ることが保証されている法定相続分の一部のことです。配偶者や子ども(直系卑属)がいる場合、被相続人の遺言や贈与によって不公平な相続がなされたとしても、法律上保護される取り分が確保されています。

兄弟姉妹には遺留分は認められていませんが、直系の子どもである長男・次男・三男には遺留分の権利があります。具体的には、相続人が3人であれば各人の法定相続分は1/3、その半分である1/6が遺留分になります。

生命保険金は遺産に含まれるのか?

多くの人が勘違いしやすいのが、「生命保険金は遺産に含まれるのか?」という点です。民法上、生命保険金は「受取人固有の財産」とされ、原則として遺産分割の対象には含まれません。

ただし、遺留分の算定においては例外的に考慮されることがあります。たとえば、被相続人が一部の相続人だけに高額な保険金を渡している場合、他の相続人にとって著しく不公平であると判断されれば、特別受益として扱われる可能性があります。

生命保険を受け取っていても遺留分請求できるか?

今回の事例では、三男が1,000万円の生命保険Bを受け取っており、遺留分相当額は750万円。一般論でいえば、受け取った保険金が遺留分額を上回るため、さらに遺留分を請求する法的根拠は乏しいという解釈になります。

ただし、生命保険が著しく多額で、他の相続人との間で明確な不公平がある場合には、「特別受益」として遺留分の対象に加えるよう主張することが可能です。逆に、すでに遺留分以上の利益を受けていれば、請求は難しいとされます。

実家に対して慰留分を請求したい場合の考え方

長男が実家(土地建物:2,500万円)を単独で取得し、次男・三男がそれぞれ1,000万円ずつの保険を受け取っている場合、形式的には均衡が取れているように見えます。

しかし、仮に保険金の受け取りが遺留分の充足と見なされず、かつ不公平性が認められた場合には、実家の価値に対して一部を請求するという主張ができる余地があります。とはいえ、すでに1,000万円を受け取っている三男が750万円の遺留分を根拠にさらに請求するのは一般的には認められにくいとされます。

実務的な対応:弁護士への相談と今後の方針

こうした相続問題は法的判断が複雑なうえ、家族間の感情も絡みやすいため、早い段階で相続に強い弁護士に相談することが賢明です。

特に、遺留分侵害額請求には期限があり、相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内と定められています。この期限を過ぎると請求が認められません。

まとめ:公平な相続のために冷静な判断を

生命保険を受け取っている場合でも、遺留分を請求できるかどうかはケースによって異なります。基本的には、すでに遺留分相当額以上の受け取りがある場合は追加の請求は困難ですが、状況次第では例外も存在します。

納得のいく相続を実現するためには、法的根拠と証拠をそろえたうえで、専門家のアドバイスを得ながら冷静に判断することが重要です。

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