学歴詐称と聞くと、通常は「高卒なのに大卒と偽る」パターンが思い浮かびます。しかし、実はその逆――大学院卒や大卒の人が「高卒」と偽るケースも存在します。この記事では、いわゆる“逆学歴詐称”について法律上の問題や実務への影響をわかりやすく解説します。
そもそも学歴詐称とは何か?
学歴詐称とは、履歴書やエントリーシートなどに事実と異なる学歴を記載する行為です。大卒を高卒と偽る場合でも「事実と異なる内容を書いている」点では同じです。
ただし、法的に問題となるのは「詐称したことによって不正な利益を得たかどうか」という点です。刑法における詐欺罪などが成立するには、「人を欺いて財物を交付させる」ことが要件となります。
逆学歴詐称は法律違反になるのか?
結論から言えば、逆学歴詐称は一般的には刑事罰の対象にはなりません。なぜなら、「自分の能力を過小に見せて雇用される」行為が直接的に会社へ損害を与えるとは言えないからです。
ただし、企業側が「高卒のみを対象とする」求人を出していた場合、その条件に合致しない人を採用したことによって、社内ルールや待遇に不整合が出る可能性があります。これは懲戒解雇や雇用契約の無効など、民事的なリスクが生じるケースもあります。
なぜ大卒者が高卒と偽るのか?
地方の中小企業や、いわゆる“現場系”の仕事では「学歴が高いと扱いづらい」と敬遠されることがあります。こうした職場では「即戦力」や「上下関係を守れる人材」が求められる傾向が強く、学歴が高すぎると浮いてしまうリスクもあるのです。
そのため、あえて高卒と申告して企業に馴染みやすくしようという意図で逆詐称する人も存在します。これは「円滑な人間関係のため」の自己防衛とも取れますが、企業との信頼関係を損なう要因にもなり得ます。
実際のトラブル事例と判例
過去には、大学中退を「高校卒業」と記載して就職したケースで、企業側が後から経歴を確認し「履歴書に虚偽あり」として退職を迫った例があります。このケースでは、明確な損害があったわけではなく、企業も法的手段には出ませんでした。
ただし、公務員や特定の資格職では学歴が採用要件に直結するため、経歴詐称が発覚した場合に採用取り消しや免職になる可能性があります。
企業側が気をつけるべきポイント
雇用主側としては、学歴要件を重視するならば、卒業証明書の提出を必須とするなどの制度を整える必要があります。逆に、職務遂行能力を重視する場合は、学歴欄にあまりこだわらずスキル中心の評価へと移行するほうが適切かもしれません。
近年は中途採用やキャリア採用も増加しており、「学歴よりも実績」という企業文化が広がりつつあります。
まとめ:逆学歴詐称はグレーゾーン、でも信頼関係がカギ
大卒や院卒の人が高卒と偽って就職した場合でも、法律違反とはならないケースがほとんどです。ただし、雇用主との信頼関係が前提にある以上、発覚したときに不信感を生むリスクがあります。
誠実な申告が基本であることに変わりはありません。企業文化や職場の風土を見極めた上で、必要ならば説明を加えることで、無用な誤解を防ぐことができるでしょう。