表示錯誤と動機の錯誤の違いとは?民法上の要件と効果をわかりやすく解説

民法における意思表示の錯誤には「表示錯誤」と「動機の錯誤」があります。どちらも契約の無効を主張する際に重要となる概念ですが、その意味や法的効果には明確な違いがあります。この記事では、これら二つの錯誤の相違点についてわかりやすく解説します。

表示錯誤とは何か

表示錯誤とは、当事者の内心の意思とその表示(表現)とが一致しない場合に生じる錯誤です。たとえば、売買契約において1,000円と書くつもりが誤って10,000円と記載してしまった場合などが該当します。

このような錯誤は、意思と表示の不一致によって成立し、民法95条1項に基づき、法律行為の要素に錯誤があるときは、その意思表示は無効とされます。

動機の錯誤とは何か

動機の錯誤とは、意思表示そのものは内心の意思と一致しているが、その意思を形成する過程において誤解がある場合をいいます。たとえば、ある土地を「駅から徒歩5分」と思って購入したが、実際は15分だったというケースです。

原則として動機の錯誤は、表示に現れていない限り法律上の錯誤とはならず、契約の無効を主張することはできません。ただし、動機が相手方に表示され、それが契約の内容として重要な要素であると認められるときには錯誤による無効が成立する可能性があります。

両者の相違点

表示錯誤と動機の錯誤の最大の違いは、錯誤が「表示に現れているか否か」にあります。表示錯誤は意思表示の内容そのものに誤りがあるため、原則として錯誤無効が認められます。

一方で動機の錯誤は、表示に現れていない場合は原則として無効にならず、「表示されていること」「重要な要素であること」「善意・無重過失であること」が必要条件となります。

錯誤無効の要件と効果

錯誤無効が成立するには、民法95条に基づいて、次の3要件を満たす必要があります。

  • 法律行為の要素に関する錯誤があること
  • その錯誤が重要であること
  • 表意者に重大な過失がないこと(相手方に悪意または重過失があればこの要件は不要)

錯誤による意思表示は、無効とされます。ただし、相手方が善意無重過失の場合には、信頼保護の観点から無効主張が制限される場合もあります。

模範解答の例

模範解答の一例は以下のように記述できます。

「表示錯誤とは、表意者の内心の意思と表示が一致しない錯誤であり、原則として要素の錯誤に該当すれば無効とされる(民法95条)。一方、動機の錯誤とは、意思表示の動機に誤解がある場合であり、これが表示され、契約の重要な要素と認められる場合に限り、錯誤無効が認められる。両者は、錯誤が表示に現れているか否か、また錯誤無効の成立要件において異なる。」

このように整理することで、論述式の試験でも明確に説明できます。

まとめ:理解のポイントと学習のヒント

表示錯誤と動機の錯誤は、意思表示の錯誤に関する基本的かつ重要な論点です。民法95条を根拠に、その定義・適用要件・効果を正確に理解し、具体例を交えて説明できるようにしておきましょう。

学習の際には、判例や過去の試験問題を参考にしながら、実務でどのように評価されるかも併せて検討すると理解が深まります。

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