ひとり農家が交通事故で休業損害を請求するには?年商と赤字申告時の計算方法を解説

交通事故に遭い、仕事を休まざるを得なかった場合に請求できる「休業損害」。特に農業や自営業の場合、会社員のように給与明細がないため、どのように金額を算出すればよいのか迷う方も多いでしょう。本記事では、ひとり農家の方が過失割合ゼロの事故で休業損害を請求する際、どのような方法で金額が計算されるかを詳しく解説します。

休業損害とは?誰が対象になるのか

休業損害とは、交通事故によって仕事ができず、本来得られるはずだった収入が減少した場合に補填される損害です。会社員だけでなく、農家・フリーランス・自営業者も対象です。

今回は「相手側の過失が100%(いわゆる10:0事故)」であるため、被害者側が全額を請求する権利があります

農家の休業損害はどうやって計算されるのか

農業従事者の休業損害は、原則として前年の確定申告書(青色申告決算書・収支内訳書)などから、年収や営業利益をベースに1日あたりの損害額を算出します。

ただし、収支が赤字に近い場合設備投資などで一時的な支出が大きかった年は、実態に即して調整されるケースもあります。年商(売上高)そのものが損害額の根拠になるわけではなく、「実際の収益(所得)」や「労務提供の対価」が基準になります。

最低限の保障額「自賠責基準」について

自賠責保険では、休業損害は原則として1日あたり6,100円(または収入証明がある場合は19,000円を上限)で計算されます。収入資料が乏しい、もしくは所得が極端に低い場合は、最低保障である6,100円/日が採用される可能性があります。

一方で、収入証明(確定申告書、帳簿、通帳の記録など)がきちんと整っていれば、実際の所得額÷365日×休業日数で計算され、1日あたりの金額が変わってきます。

確定申告が赤字でも「労務提供の対価」として請求できる

農業経営者の場合、設備投資などで所得が赤字に近くても、「自分の働きに対して報酬が支払われていたならどれくらいか」を示せれば、休業損害の請求は可能です。

たとえば、前年の売上・経費の明細をもとに、農作業の労務単価や外注費と比較して「一人あたり日額◯円相当」と主張するケースもあります。地域農協の労務単価や、同業者の収益性と照らし合わせることがポイントです。

保険会社に提出する書類と交渉のコツ

  • 前年の確定申告書(青色申告決算書)全ページ
  • 売上・経費の内訳帳、通帳の入金履歴
  • 事故による就業不能を証明する診断書
  • 事故後の休業期間を示す日報や作業予定表

保険会社が自賠責基準での最低額を提示してきた場合でも、これらの書類が揃っていれば実損ベースでの交渉が可能になります。交渉が難航する場合は、弁護士に相談するのも一つの手です。

まとめ:ひとり農家でも休業損害は請求できる。大切なのは「収益の実態」

休業損害は「赤字=請求不可」ではありません。特に農業のように収支の変動が大きい業種では、確定申告の内容や日々の作業実態をもとに、労務の価値を算出することが重要です。

保険会社に提示された額が納得いかない場合でも、丁寧に資料を揃えて交渉すれば、実際の損害に見合う金額を受け取れる可能性があります。決して泣き寝入りせず、自分の権利を正しく主張しましょう。

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