インターネット上には美しい風景写真やポートレート、動物写真など、創作意欲を刺激する素材が数多く存在します。そんな中、「ネットの写真を参考に絵を描くのは著作権の侵害ではないか」と不安に思う方も少なくありません。この記事では、法律的な観点と実務上の対応を踏まえながら、著作権と創作活動のバランスについて解説します。
著作権とは何か?創作物の保護の仕組み
著作権とは、著作物(文学・音楽・絵画・写真など)を創作した人に与えられる排他的な権利で、無断使用や複製、改変、配布などを制限する法的な保護手段です。写真は創作性が認められる限り「著作物」として保護され、その使用には制限があります。
つまり、ネット上に公開されている写真でも、それを撮影した人物に著作権が存在している限り、勝手に使うことはできないというのが基本です。
「参考にする」と「複製する」はどう違う?
著作権法では「模倣」「翻案」なども保護の対象とされています。よって、写真をそのまま模写する、構図や人物の配置を忠実に再現するなどは「複製」や「翻案」にあたり、著作権侵害と判断される可能性があります。
一方、構図や雰囲気を参考にして全く異なる表現へと昇華していれば、著作権侵害とはされないこともあります。ただし、その「参考にした範囲」があまりに近すぎると、著作権者から指摘される恐れは残ります。
著作権侵害とされる具体例・されない具体例
- 侵害とされるケース:ネット写真をそのまま模写し、構図・色使い・人物の服装まで再現して投稿。
- セーフとされるケース:構図だけ参考にして、人物の表情・背景・配色・衣装などを大きく変更し、全く別の意図をもって描いた創作絵。
このように、どれだけ元の写真から独立した創作性があるかが判断のポイントになります。
「引用」や「フェアユース」は適用されるのか
日本の著作権法では、教育目的や報道、評論など限定的な場面において「引用」が認められますが、創作活動においては原則適用外です。つまり、絵を描く際に「引用だから大丈夫」とは言えません。
また、アメリカの「フェアユース」のように柔軟な制度は日本には存在しませんので、より慎重な判断が求められます。
トラブルを避けるためにできること
- 著作権フリー素材を使う:Pixabay、Unsplash、ぱくたそなど、商用利用可能な写真素材を利用する。
- 創作元を明記する:SNSで「参考にしました」と表記していても、著作権侵害が免れるわけではありませんが、誠意のある対応として有効です。
- AIで構図を生成する:構図のアイデアをAI生成ツールで作ることで、著作権リスクを軽減できます。
まとめ:創作意欲と法的リスクのバランスを保とう
ネットに挙げられた写真を参考に絵を描くことは、一定条件下では問題となる場合があります。特に、元写真との類似性が高いほど、著作権侵害のリスクが高まります。
安全に創作を続けるには、著作権フリー素材の活用や、元写真から構成要素を抜き出し自分なりの解釈で描くといった工夫が有効です。創作活動を長く楽しむためにも、法的知識を持ってリスクを避けましょう。