横断歩道で歩行者を無視して通過する車両を見ると、強い怒りや不快感を覚える方も多いでしょう。では、もしその場で車に「飛び蹴り」などの実力行使をした場合、法的にはどのような扱いになるのでしょうか?この記事では、感情的な行動がどのような罪に問われる可能性があるのか、正当防衛や過剰防衛の考え方も交えて解説します。
横断歩道で車が止まらないのは違反
まず前提として、歩行者が横断歩道を渡ろうとしている場合、車両は必ず停止しなければなりません(道路交通法第38条)。違反すれば「横断歩行者等妨害等違反」として反則金と違反点数が科されます。
この違反は非常に多く、警察庁も取締りを強化している項目のひとつです。つまり、歩行者側が怒りを覚えるのも当然のことではあります。
それでも「飛び蹴り」は罪に問われるのか?
結論から言えば、たとえ相手が違反していても、飛び蹴りを行えば刑法上の「器物損壊罪」「暴行罪」「傷害罪」などに該当する可能性が高いです。
実際に車両に物理的な損壊があれば、器物損壊罪(刑法261条)に該当します。仮に人に当たった場合は暴行罪(刑法208条)、怪我をさせた場合は傷害罪(刑法204条)にもなりえます。
また、防犯カメラやドライブレコーダーが当たり前の現代では、証拠が残ってしまい、悪意のある「攻撃」として扱われる危険性もあります。
正当防衛が成立するケースはあるのか?
刑法36条によれば、「自己または他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」は正当防衛として処罰されません。
しかし、今回のように「飛び蹴り」などの攻撃が、明らかに危険を回避した後に行われた場合や、身体的な攻撃として過剰である場合は、正当防衛の範囲を超えるとして認められないことがほとんどです。
例えば「車が完全に通過した後に蹴った」「衝突の危険はなかったが怒りで蹴った」という場合は、正当防衛どころか違法行為とされる可能性が高いです。
感情的な行動の代償は意外と重い
仮に損壊した車の修理費が10万円を超えた場合、民事上は損害賠償請求を受けることになります。刑事事件として捜査された場合は、前科がつくリスクもあります。
被害者(この場合は車の所有者)が告訴しなくても、器物損壊など一部の罪は「非親告罪」として警察が捜査可能です。正義感からの行動が人生を左右する結果になることもあるため、十分な注意が必要です。
適切な抗議の方法と対処法
横断歩道を無視した車に対して怒りを覚えた場合は、ナンバープレートを控え、警察に通報することが正当な対処法です。
警察に「道路交通法第38条違反の疑いがある」と伝えることで、交通指導員や取締りの対象になる可能性があります。また、証拠があればドライブレコーダー映像なども提出可能です。
まとめ:正義感と違法行為は切り分けることが重要
交通違反に対して怒りを覚えるのは自然な感情ですが、自ら違法行為をしてしまえば立場が逆転してしまいます。飛び蹴りのような実力行使は「罪に問われる」可能性が極めて高く、感情を行動に移す前に一度冷静になることが大切です。
本当に正しい抗議の方法とは、法律に則った形で訴えること。その積み重ねが、社会の安全と正義につながります。