性被害にあった際、恐怖や混乱の中で記憶が曖昧になるのは決して珍しいことではありません。この記事では、被害時の証言と後から判明した事実が食い違った場合にどう対応すればいいのか、また法的にどのように扱われるのかをわかりやすく解説します。
混乱した状況での記憶の曖昧さは自然な反応
被害直後の証言は、心理的なショックや緊張状態にある中で行われるため、記憶が曖昧だったり誤認が含まれていたりすることは極めて一般的です。
たとえば、車の色や車種、相手の服装などについて明確に覚えていないことはよくあります。これは「トンネル記憶」や「選択的記憶」と呼ばれ、防衛反応の一種とされています。記憶が曖昧なこと自体に罪はありません。
証言の訂正は問題ではない
最初に「シルバーの車だった」と警察に伝えたとしても、後日「白だったかもしれない」と訂正することは、虚偽申告には当たりません。故意に虚偽の情報を流すことがなければ、罪に問われることは基本的にありません。
実際、捜査機関も記憶の不確かさを理解しており、被害者の心理状況を考慮して聴取を行います。大切なのは「故意ではなく、当時そう思った」ことを素直に伝えることです。
警察の対応と補足証言の重要性
警察は証言の整合性だけでなく、状況全体から判断して捜査を進めます。目撃情報、物的証拠、防犯カメラなどの情報を総合的に検討するため、車の色が違っていたとしても捜査そのものが止まることはありません。
証言に不安がある場合や思い出したことがあれば、すぐに警察に伝えることが大切です。証言補足は、信頼性を下げるのではなく、誠実に協力していることの証になります。
被害者の権利と安心して話すために
日本では「性犯罪被害者等支援制度」があり、専門の相談窓口や被害者支援弁護士制度があります。証言のブレや訂正に不安を感じたときは、弁護士や支援センターに相談することで安心して対応ができます。
警察も現在では性被害に対して配慮した聴取方法を導入しており、女性警察官の対応や別室での聴取が可能です。勇気をもって相談したこと自体が尊重されるべきです。
実例:証言ミスを訂正したケース
ある被害者は、犯人の服装について「黒のジャケット」と証言したものの、後に「グレーだった」と訂正しました。その後の捜査では目撃者と防犯カメラの映像が一致し、証言の訂正はむしろ捜査の精度を高める結果となりました。
このように、間違いに気づいた時点で正直に申し出ることは、捜査機関にとっても有益であり、責められる理由にはなりません。
まとめ
性被害のような重大な事件では、記憶の曖昧さや証言の誤りは避けがたいものです。大切なのは、意図的でない限り、それを恐れる必要はないということです。
怖くても一歩踏み出して話した事実を尊重し、必要であれば訂正を申し出ましょう。正確であろうとする姿勢こそが、最終的には真実の解明に近づく力になります。