司法試験対策:幇助犯の教唆と事後強盗における幇助の成否を徹底解説

刑法の試験や実務で頻出する論点に「幇助犯の教唆」や「事後強盗と幇助の関係」があります。これらのテーマは、行為者の関与の程度や時期、正犯との関係性など多角的に検討する必要があり、理解が浅いと誤解を招きやすい領域です。本記事では、司法試験にも対応できるような体系的かつ判例に基づいた整理を行います。

幇助犯を教唆した場合、教唆犯は成立するのか?

刑法上、教唆犯(刑法61条)は「正犯を教唆した者」が成立要件です。問題は、幇助犯が正犯に該当するかどうかという点にあります。

判例・通説上は、「幇助犯は派生的に正犯の一種と扱われるため、その幇助行為を教唆した場合にも教唆犯が成立する」と解されます。すなわち、幇助行為者に実行の意思があれば、その者に幇助犯が成立し、これを教唆した者にも教唆犯が成立します。

たとえば、AがBに「Cの犯行を手伝え」とそそのかし、Bが実際に幇助行為に及んだ場合、Bに幇助犯、Aにはその幇助犯に対する教唆犯が成立します。

例外的な扱い:幇助未遂の場合はどうなる?

仮に幇助が未遂に終わった場合でも、教唆者に対して教唆未遂犯の成否が問題になります。教唆犯は「間接正犯的」な性格を持つため、幇助の未遂が成立するか否かが連動して判断されます。

判例においても、幇助未遂の教唆については「教唆未遂の成立を肯定」する立場が一般的です。

事後強盗における幇助:財物の窃取行為のみ支援した場合

事後強盗罪(刑法238条)は、窃盗後に暴行・脅迫によって財物の占有を確保または逃走を図る行為に適用されます。この罪の正犯を幇助した場合、幇助者の行為が「どの範囲」に及んだかが重要なポイントとなります。

具体的に、正犯が事後強盗に該当する行為(暴行等)を行ったものの、幇助者が財物の占有確保に関与せず、単に財物の持ち運びを手伝った程度であれば、幇助の対象行為が「窃盗部分」に限られるとして、窃盗罪の幇助犯にとどまると考えられます。

実務上は、幇助行為の時点や場所、意思連絡の有無も総合的に考慮され、事後強盗の共謀があったかが焦点となる場合もあります。

判例の立場と実務での評価

事後強盗罪の幇助については、最高裁判例(昭和58年6月9日)で「幇助者が強盗的手段に関与していない場合には、窃盗罪の幇助犯にとどまる」と明言されています。

この判例は、幇助者が暴行や脅迫の実行について認識・共謀を欠いた場合には、重大な結果が生じていてもより軽い罪責で処理するという立場をとっています。したがって、事後強盗正犯との「認識の共有」があるかが分水嶺となります。

まとめ:関与の範囲と共謀の有無が構成要件判断のカギ

幇助犯に対する教唆行為は教唆犯を成立させるという理解が妥当であり、これは通説・判例の立場です。一方で、事後強盗罪において幇助者が財物窃取にしか関与していない場合は、窃盗罪の幇助犯にとどまるとされます。

司法試験では、行為者の意思・認識・行為態様を丁寧に分析する姿勢が問われます。幇助と教唆、そして共謀の概念を正確に整理することで、事例問題に対して説得力ある答案が書けるようになるでしょう。

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