インターネット上の誹謗中傷に対して法的措置を講じるケースが増えています。特にYouTubeやTwitter、TikTokなど複数のSNSを使って発信された中傷行為が、どこまで追跡・特定されるのか気になる方も多いのではないでしょうか。今回は「YouTubeでの開示請求」が他のSNSにも波及するのかという点を中心に解説します。
基本的にはプラットフォームごとに開示請求が必要
開示請求とは、投稿者のIPアドレスやログイン情報などをプラットフォーム運営会社に対して請求する法的手続きです。原則として、YouTubeで投稿された内容に対して開示請求を行った場合、開示される情報はYouTube上のものに限られます。
したがって、YouTubeとTwitterやTikTokは異なる企業が運営しているため、仮に同じ人物が複数のSNSで中傷を行っていたとしても、それぞれのプラットフォームに対して個別に開示請求を行わなければなりません。
複数のSNSを使っている場合、どう見つかる?
加害者が異なるアカウント名やハンドルネームを使っていても、文体や投稿のタイミング、使用しているフレーズなどの「ネット上の足跡」から同一人物である可能性を指摘されることがあります。
例えば、YouTubeでの誹謗中傷とTwitterでの発言が酷似している場合、被害者や代理人弁護士が調査の上、「同一人物である可能性が高い」として証拠をそろえ、複数の開示請求を並行して行うことがあります。
ログインIPや使用端末から特定されるリスク
たとえアカウント名が違っても、開示請求によって取得されたログインIPアドレスが一致していれば、複数のSNSアカウントが同じ人物のものであると特定される可能性が高まります。
たとえば、YouTubeの開示で取得したIPアドレスと、Twitter上での中傷コメントに対応するIPが同じプロバイダ・時間帯であれば、さらなる開示請求が認められる根拠となることもあります。
開示請求に備えて匿名性を過信しないことが重要
インターネット上では匿名で発信できるとはいえ、開示請求制度やデジタル・フォレンジックの進展により、特定される可能性は以前より格段に高まっています。過去にはVPNを使っていてもログが保管されていたことで身元が判明した例もあります。
一度開示された情報が、他SNSでの行為の手がかりとなることもあるため、「YouTubeだけなら大丈夫」とは言えません。
まとめ:複数SNSにまたがる誹謗中傷は広く追跡・訴訟される可能性あり
開示請求は原則としてプラットフォームごとに行う必要がありますが、被害者が証拠を整理すれば、TwitterやTikTokなど他のSNSにも波及する形で調査・開示が進むケースは珍しくありません。
インターネット上での誹謗中傷は一時の感情で行ってしまいがちですが、複数のSNSで繰り返すことで加害性が強く評価され、損害賠償や刑事責任が問われるリスクが高まります。誤解やトラブルを防ぐためにも、日頃から節度ある投稿を心がけることが大切です。