建築工事において、納品された商品の寸法違いによって工程が狂い、他業者への影響や追加コストが発生することは珍しくありません。この記事では、そうした事態において問屋側に遅延費や職方のキャンセル費を請求できるのか、法的根拠と実務上の対応について詳しく解説します。
納品ミスは契約不履行に該当するのか
建材などの商品が寸法違いで納品された場合、それは法律上「契約不履行(履行不能または不完全履行)」に該当します。民法第415条によれば、債務不履行があった場合、債権者(依頼主)は損害賠償を請求する権利を有します。
したがって、寸法違いが発注ミスや製造側の責任によるものであれば、損害賠償の対象となりうるのです。
問屋に請求できる費用の種類
一般的に、以下のような費用が損害として認められる可能性があります。
- 施工業者(職方)へのキャンセル料
- 再訪問に伴う出張費・拘束費
- 工程遅延による人件費や仮設コスト
- 次工程の業者への賠償(間接損害として)
ただし、これらを請求するには「発注内容の正確性」「納品ミスの責任がどちらにあるか」「因果関係の明確化」が必要です。
請求のために必要な証拠と記録
スムーズに交渉または法的請求を進めるためには、以下のような記録を保管しておきましょう。
- 契約書・発注書(仕様や納期の明記)
- 納品書・写真・立ち合い記録
- 業者からの請求書・キャンセル費の明細
- 工期変更による追加コストの見積書
特にメールやチャットなどでの発注確認は、後の責任所在を証明する重要な証拠となります。
損害賠償請求の流れと実務的対応
まずは取引先の問屋に対し、協議による解決を求めるのが基本です。請求内容を文書でまとめ、発生した費用の内訳と根拠を添えて説明しましょう。
それでも対応がなされない場合、内容証明郵便での請求、または弁護士を通じた法的措置(民事訴訟)を検討することになります。ただし、工事全体の進行を優先して現場調整が求められるのも建築業の実情であるため、段階的な対応が重要です。
実例:木製建具の納品遅れと工期遅延
ある中小施工会社では、建具の寸法違いにより設置不可となり、大工・クロス・美装業者の手配がすべてやり直しに。再調整の人件費と現場拘束費約20万円を問屋に請求し、交渉の結果、製造側と折半する形で負担が実現しました。
このように、状況を記録し冷静に交渉することで妥当な補償が得られる可能性はあります。
まとめ
納品ミスにより工事全体が遅延した場合、法的には損害賠償請求が可能です。ただし請求を成立させるためには、責任の所在を明確にし、因果関係と損害額を裏付ける証拠が必要となります。
現場の混乱を避けるためにも、まずは冷静な事実確認と協議を重ね、文書化された形で対応を進めることが重要です。万一のために弁護士や専門家への相談も視野に入れておきましょう。