配偶者が勝手に借金をし、すでに別居状態となっている場合でも、法的な影響が及ぶ可能性があるのは事実です。特に、督促状や裁判所からの通知が届きはじめた段階では、家財の差し押さえリスクが現実的な問題になります。この記事では、夫婦の別居状態や借金トラブルがある中で、どこまで家財が差し押さえ対象になるのか、またそのリスクを避けるために取るべき対策を解説します。
差し押さえの対象になるのは誰の財産?
原則として、差し押さえの対象となるのは債務者本人の財産のみです。つまり、借金をした本人、今回のケースでは「夫」の名義の財産や収入が対象となります。妻や子供の財産が直接差し押さえられることは通常ありません。
ただし、夫名義の家に住んでいる場合、家財が誰の所有物なのかを証明できなければ、家庭内にある全ての物品が「夫のもの」と推定されてしまうリスクがあります。
家財差し押さえの現場で起こること
実際の差し押さえ手続きでは、執行官が自宅に訪れ、現地で差し押さえるべき動産を確認・選定します。このとき、「これは夫の物ではない」と主張するには、家財の所有者を明確に証明する必要があります。
例えば、家具・家電・貯金などに関しては、レシート・購入記録・振込履歴などの証拠を提示することが非常に重要です。タンス貯金についても、仮に妻個人のものであっても、それを示す証明(自分の口座から引き出した記録など)がないと、夫の財産と見なされるリスクがあります。
住所を変更していない場合のリスク
夫が別居しているにもかかわらず、住民票の住所変更を行っていない場合、債権者や裁判所は「その住所に夫が居住している」と見なします。結果として、その家に対して差し押さえの執行が行われる可能性があります。
実例として、すでに別居中で夫が住んでいないにもかかわらず、住所変更していなかったため、妻子が住む住宅に執行官が来たケースがあります。このようなトラブルを避けるためにも、早期に住所変更を行ってもらう、あるいは住居に関する権利関係を明確にしておくことが必要です。
巻き込まれないためにできる具体的な対策
- 夫に住民票の住所変更を促す
- 家財や現金の所有者を証明できる書類を準備する(レシート・振込履歴など)
- 貯金や大切な家財は一時的に別の場所に保管する
- 将来的に引っ越しを検討しているなら、早めに実行する
- 家庭裁判所や法律の専門家に相談する
特に子供のためにも、無用なトラブルを未然に防ぐことが重要です。法テラスなど無料相談窓口の活用も有効です。
夫婦間の財産関係と連帯責任の誤解
「夫婦は連帯責任がある」と誤解している方もいますが、民法上、夫婦であっても原則的には財産は別々に管理されるべきものとされています(別産制)。つまり、夫の借金があるからといって、妻がその借金を支払う義務を負うわけではありません。
ただし、共同名義のローンや連帯保証人になっている場合は話が別です。該当する契約があるかどうかを改めて確認しておくと安心です。
まとめ:家財を守るには早期の準備と証拠が鍵
別居中の夫が多額の借金を抱え、その影響が現在の住居に及びそうな場合、最も重要なのは「自分の財産であることの証明」と「リスクの早期回避」です。督促状や裁判所からの通知を無視せず、状況を正しく把握し、引っ越しや所有証明の準備など、できることから対策を進めましょう。
不安な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが、最も確実で安心な方法です。