車同士の軽い接触事故の後、当初は物損事故として処理されていたにもかかわらず、後日になって被害者が「人身事故扱い」に変更を求めるケースがあります。なぜそんな対応をするのでしょうか?この記事では、人身事故へ切り替える背景や被害者側のメリット、加害者に及ぶ影響を詳しく解説します。
物損事故と人身事故の違いとは?
物損事故とは、車や物(ガードレール・標識など)に損害が出た事故で、人に怪我がなかったとされるケースを指します。これに対し、人身事故は人の身体に被害(痛み・怪我など)があったと診断書が提出された場合に認定される事故です。
物損事故の場合、警察は軽微な扱いとし、加害者に行政処分(違反点数や罰金)はつきません。一方、人身事故になると、加害者には点数加算や反則金・罰金・刑事処分が課せられる可能性が出てきます。
人身事故への切り替えで被害者が得られる主なメリット
事故後に身体に痛みが出た場合、物損事故のままでは治療費や慰謝料の請求が保険上で正しく処理できないことがあります。そのため、医師の診断を受けたうえで「人身事故」として届け出ることで、以下のようなメリットが生じます。
- 自賠責保険からの補償(最大120万円)
- 通院交通費や休業補償の対象になる
- 慰謝料が支払われる可能性が出てくる
特にむち打ちなどは、事故直後には症状が出ず、数日後に首や肩に違和感が現れるケースもあるため、後日切り替えを希望する人が多いのです。
「痛いと言えば金がもらえる」という誤解について
確かにネットなどでは「軽傷でも診断書を出せば慰謝料がもらえる」といった話も見かけますが、実際には簡単ではありません。医師による診断と、保険会社による適正な審査を通過しなければ、補償や慰謝料の支払いは行われません。
また、過剰な請求や虚偽の申告は保険金詐欺に該当する可能性があり、被害者側にもリスクがあります。そのため、ほとんどのケースでは「本当に痛みがあるから人身扱いにした」というのが実態です。
加害者側の影響と心構え
人身事故に切り替わると、加害者には以下のような行政・刑事処分が発生する可能性があります。
- 違反点数加算(軽傷事故で3点程度)
- 反則金または刑事罰(略式起訴で罰金)
- 保険料の増額(等級ダウン)
これにより、たとえ軽微な接触事故でも、処分内容や経済的負担は大きく変わる可能性があります。そのため、事故発生時は安易に物損で済ませず、慎重に相手の状態を確認し、場合によっては警察や保険会社に相談を入れることが大切です。
実例:物損→人身切り替えが行われたケース
ある事例では、駐車場で接触した際に被害者は「大丈夫」と言ったものの、翌日から首に違和感が出たため整形外科を受診。診断書を取得して警察に届け出、正式に人身事故扱いとなりました。
加害者はその後、3点の違反点数が加算され、自動車保険も3等級ダウン。結果的に保険料が年間3万円以上増額されたとのことです。
まとめ
自動車事故において、物損から人身事故に切り替えを求める理由は、単に「お金が欲しいから」ではなく、被害者側が適切な治療費補償や慰謝料請求の権利を得るためです。特に症状が後から出てくるケースでは、正当な理由による切り替え申請が行われることが多くあります。
加害者側としては、相手の状態を軽視せず、誠実な対応を取ることでトラブルを最小限に抑えることが重要です。事故直後に物損で処理したとしても、後日状況が変わることは珍しくないため、柔軟な対応力と知識が求められます。