交通事故治療における柔道整復師の立ち位置と医師の同意の現実

交通事故後の治療において、整形外科医と柔道整復師(整骨院)の関係性や、自動車保険の取り扱いに関するルールは複雑です。特に任意一括請求制度を利用する場合、柔道整復師の施術に医師の同意が必要とされる場面がありますが、実際の運用はやや異なります。本記事ではその背景と実情を解説します。

柔道整復師の治療に医師の同意が求められる理由

任意一括制度とは、保険会社が被害者の医療費を一括で立て替え、後に清算する仕組みです。この制度を利用する場合、医師が「医学的に施術が必要」と判断したうえでの柔道整復師の治療に限り保険が適用されます。これは、柔道整復師が医療機関ではないため、第三者的な医学的判断が必要とされているためです。

つまり、医師の同意があることで、保険会社は治療費の支払いに根拠を持たせることができます。

医師の多くが柔道整復師に「同意する」現実

実際には、整形外科医が柔道整復師に対して否定的な意見を持っていることも少なくありません。特に「整骨院=競合」と捉える医師もいます。しかし、それでも同意を得やすい理由は以下の通りです。

  • 整骨院を医療機関とみなさず、関与を避ける傾向
  • 患者の自己選択を尊重する姿勢
  • 同意を拒否すると説明責任やトラブルになる可能性

このように、医師にとって拒否するコスト>同意するメリットという構図が成立しやすく、黙認的に許可するケースが多いのです。

医師の判断が「事実上の許可」となる背景

「患者が通いたいなら好きにすればいい」という言葉は、法律的な許可ではありませんが、任意一括制度においては黙認が実質的な同意とみなされることもあります。明確に「反対」「不要」とされない限り、保険会社が支払いに応じることも多いのです。

ただし、保険会社によっては医師の文書や診断書を求めることもあり、対応には差があります。

柔道整復師と行政の関係性:利権はあるのか?

柔道整復師は、厚生労働省の管理下にある国家資格です。受領委任制度とは、患者が治療費を直接支払わずに済む仕組みで、整骨院が代わりに保険請求する制度です。これに関しては、過去に厚労省が自治体に「正当な理由なく拒否しないよう」通達を出しており、一定の「政治的な後ろ盾」があるのは事実です。

これは柔道整復師という職業の公共性を重視しており、「利権」というよりも制度的に認められた立場と捉えるのが適切です。

まとめ:柔道整復師の施術はなぜ容認されるのか

交通事故の治療における柔道整復師の施術は、制度上は医師の同意が必要ですが、実際には医師が黙認的な形で容認することが多く見られます。その背景には医師の立場・保険会社の判断・制度的慣習が複雑に絡んでいます。

患者としては、まず整形外科で診断を受け、その後の治療方針を医師とよく相談することがトラブルを避ける第一歩となります。

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