遺産分割調停において、特定の不動産、たとえばマンションの1室を相続人3名が取り合う状況では、誰がその物件を相続するかについて調停委員や裁判所がどのように判断するのか気になるところです。本記事では、優先される理由や考慮される要素について、実務に基づき詳しくご紹介します。
遺産分割調停とは何か
遺産分割調停とは、相続人間で遺産の分け方について話がまとまらない場合に、家庭裁判所が仲介し合意形成を目指す手続きです。
当事者同士の話し合いに加え、調停委員の助言や裁判所の判断も影響するため、公平性が重視されます。
不動産を希望する複数人がいる場合の扱い
マンションなどの不動産を複数の相続人が取得希望する場合、裁判所は相続分や使用実態などを総合的に勘案して判断します。
「早い者勝ち」ではなく、誰が取得すべきかについて合理的な理由があるかどうかが重視されます。
優先されやすいとされる事情とは?
- 実際に住んでいる・住む予定がある:居住の必要性や生活基盤がその物件にあると認められると、取得の正当性が高まります。
- 被相続人の介護など特別寄与があった:他の相続人よりも強く取得を主張できる背景になります。
- 不動産取得後の代償金支払い能力がある:他の相続人に代償金を支払うことでバランスを保てる場合、取得が認められやすくなります。
特に居住の実態は裁判所の判断で重視される傾向があります。
代償分割とは?調整のための手段
代償分割とは、1人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。
たとえば、不動産の評価額が3,000万円で法定相続分が1/3ずつなら、不動産を取得した人は他の2人にそれぞれ1,000万円ずつ支払うのが原則です。
事例:3名でマンションを取り合ったケース
実例として、長女・長男・次男の3名が相続人となり、亡父のマンションを希望したケースでは、長女が既にその物件に居住しており、かつ他の相続人に代償金を支払える能力があったため、長女が取得することで調停が成立しました。
このように、居住の事実や金銭的調整の余地があれば、希望者の中でも優先されやすくなります。
調停で不成立の場合はどうなる?
調停で合意できなかった場合は、遺産分割審判へと移行します。審判では、裁判官が法律に則って分割方法を判断し、強制的に結論を出します。
不動産は売却して現金化(換価分割)されるケースもあるため、希望者同士で合意を目指す方が望ましいでしょう。
まとめ
・遺産分割調停では、マンションのような不動産を複数人が希望する場合、居住実態、寄与分、代償金支払い能力などが考慮されます。
・「住んでいる・住む予定がある」ことは特に強い要素となるため、主張材料として整理しておくことが重要です。
・調停が不成立となれば、売却して現金分割となる可能性もあるため、話し合いによる解決が推奨されます。