SNSなどで話題になる横領事件。特に「初犯で300万円横領して実刑2年」というケースは、執行猶予がつかないのか?という疑問や、刑務所に入れば返済しなくていいのか?といった疑問を呼び起こします。本記事では、日本の刑事裁判における実刑と執行猶予の基準、返済義務の有無について、わかりやすく解説します。
初犯でも横領で実刑となる可能性はある
日本の刑法では、業務上横領罪(刑法253条)の法定刑は「5年以下の懲役」とされています。量刑判断では「初犯」「被害金額」「示談の有無」などが総合的に考慮されます。
たとえば、300万円という金額が高額であり、示談が成立していない場合、たとえ初犯であっても実刑判決となる可能性は十分にあります。
執行猶予が付くかどうかのポイント
執行猶予は、判決で「懲役3年以下」の刑が言い渡された場合に限り、条件付きで付される可能性があります。しかし実際には以下の点が重視されます。
- 被害者への謝罪・賠償(示談)
- 反省の態度・自首の有無
- 被害金の返還状況
- 再犯可能性の低さ
上記のうち、賠償や示談がないと「反省していない」と評価されることが多く、執行猶予は付かない可能性が高まります。
実刑になったら返済義務はなくなるのか?
結論から言うと、実刑によって民事的な返済義務が消えることはありません。刑罰は「犯罪に対する制裁」、民事的な損害賠償は「被害者の損害回復」とはっきり区別されており、両立します。
たとえ実刑判決を受けたとしても、被害者側は別途、民事訴訟や強制執行で返済を請求する権利を持ちます。
実際の量刑傾向と裁判例の紹介
実務上、横領額が300万円〜500万円で執行猶予がつくには「被害弁済」がほぼ必須とされています。東京地裁などの公開判例でも、弁済なしでの実刑判決が下されている事例は複数存在します。
一方、全額返還と被害者との示談が成立していた場合、同じ金額でも執行猶予がついたケースもあります。
刑に服しても債務は残るリスク
刑務所で刑期を終えても、横領したお金を「返した」ことにはなりません。支払いを怠れば、給与差し押さえや財産差押えといった強制執行が行われるリスクもあります。
また、判決文で損害賠償の義務が命じられた場合には、判決確定後10年間は時効が停止されるため、長期的に債務が残る可能性もあります。
まとめ:横領300万円での実刑は「妥当」とも言える
初犯でも横領額が高額で、示談が成立していない場合は、実刑判決は珍しくありません。また、実刑に処されたからといって、返済義務が消えることもありません。刑事と民事は切り離されており、刑を終えた後も返済を求められるのが現実です。
横領や窃盗といった財産犯では、早期の謝罪と被害回復が結果を大きく左右します。可能な限り早く弁護士に相談し、被害者との話し合いの機会を持つことが、執行猶予獲得や刑の軽減への第一歩です。