交通事故後、「痛くないのに痛いと訴える」ことで慰謝料や見舞金を得ようとするケースは実際に存在します。しかし、そうした虚偽の申告は重大なリスクを伴い、最悪の場合は刑事罰や損害賠償請求の対象にもなり得ます。本記事では、医師の診断の実態や虚偽申告のリスク、そして防止策まで詳しく解説します。
医師は「痛い」と言えば診断書を書いてくれるのか?
整形外科などの医師は、患者の主観的な訴えに基づいて診察を進めるため、「首が痛い」「腰が重い」などの申告があれば、症状名として「頚椎捻挫」「腰部挫傷」などの診断を付けることがあります。これは医師が「嘘と分かっていて診断を出している」のではなく、現行の医療制度において主観症状も考慮するのが通例だからです。
特にむちうちや打撲などはレントゲンやMRIでは異常が映らないことも多く、患者の訴えが主な判断材料となることが少なくありません。
「痛いふり」で慰謝料を請求することのリスク
一見すると簡単に見える「痛いふり」ですが、保険会社は事故状況や通院頻度、診断内容を厳密にチェックしています。不自然な通院や過度な請求があれば、保険調査員による調査や、医師への照会が入ることもあります。
さらに、明らかな詐欺行為と判断された場合、「保険金詐欺」として刑事告発される可能性もあります。実際に過去には「過剰な慰謝料請求で逮捕された」例もあります。
慰謝料の仕組みを正しく理解しよう
交通事故の慰謝料は、通院日数や治療内容、後遺症の有無などを基に算出されます。単に「痛い」と訴えただけでは高額な慰謝料が認定されることはなく、医師の診断と通院記録が大きな根拠になります。
例えば、通院実績が10回にも満たないのに高額な慰謝料を請求しても、保険会社は合理的に判断して支払を抑える傾向があります。
虚偽申告の長期的なデメリット
一時的に慰謝料を得られたとしても、その後の人生で大きな不利益を被る可能性があります。保険会社のブラックリストに載る、再び事故に遭った際に補償を受けにくくなる、場合によっては信用情報に悪影響を与えるなどです。
さらに、虚偽が発覚すれば相手から不法行為による損害賠償請求を受ける可能性もあります。法律的な責任は極めて重いと認識しておく必要があります。
正直な対応が長期的には最も有利
事故後は本当に痛みや不調があるか、自分の身体と向き合って冷静に判断することが重要です。少しでも違和感があれば診察を受けるのは当然ですが、根拠のない訴えをするのは非常に危険です。
正直に対応し、必要な治療を受け、保険会社とのやり取りを丁寧に行うことが、結果として最大限の補償と信頼を得る近道になります。
まとめ:嘘の申告はリスクしかない
事故後の痛みを訴えることは正当な権利ですが、痛くないのに慰謝料目的で虚偽申告する行為は、詐欺罪や損害賠償請求の対象となるリスクを伴います。医師もあくまで申告に基づいて診断するため、責任は本人に及びます。
適正な補償を受けるためには、正確な申告と真摯な対応を心がけることが不可欠です。