日本では戸籍上の名前を変更することができますが、姓(名字)と名前では手続きの難易度が異なります。本記事では、姓と名前の改名制度の違いや、それぞれが変更できる具体的なケース、手続きの流れまで、法律実務に基づいて詳しく解説します。
姓の変更は比較的柔軟?婚姻・離婚や家庭裁判所を通じた手続き
姓(名字)の変更は、婚姻や離婚によって自動的に変更されるケースが多く、一般的に名前の改名よりもハードルが低いとされています。
たとえば、結婚によって配偶者の姓を名乗ることになり、その後離婚しても元の姓に戻らずそのまま使い続けることも可能です。また、家庭裁判所を通じて正当な理由が認められれば、婚姻や離婚によらず改姓することもできます。
名前の改名は「正当な理由」が厳しく問われる
一方で名前の改名は、家庭裁判所の許可が必要であり、「正当な理由」がなければ認められません。単なる気分や好みの変更ではなく、社会生活上の支障などを証明する必要があります。
例えば、名前が難読・難解で生活に支障がある、いじめや嫌がらせの原因になっている、通称として長年使ってきた名前を正式な戸籍名にしたい場合などが、正当な理由と認められることがあります。
実例で見る:改名が認められたケース
ある男性は、幼少期から通称で「光(ひかる)」と呼ばれており、職場や公的書類でも通称名が定着していました。改名を希望して家庭裁判所に申し立てたところ、「通称として社会的に認知されていること」を理由に、戸籍上の改名が認められました。
一方、ある女性は「幸子(さちこ)」という名前が古風すぎて嫌だと感じ、「さくら」への改名を希望しましたが、裁判所は「正当な理由がない」として申立てを却下しました。このように、改名が認められるかどうかは事案ごとに異なります。
戸籍変更に必要な手続きと必要書類
改名や改姓の申立ては家庭裁判所に対して行い、申立書、本人確認書類、改名理由を裏付ける証拠(書類や陳述書など)が求められます。審理は非公開で行われ、必要に応じて裁判官から事情聴取があります。
申立てが認められると、審判書が交付され、それをもって市区町村の役所で戸籍変更の届出を行います。実際に戸籍に反映されるまでには数週間かかることもあります。
通称使用という選択肢もある
正式な改名ではなく、日常生活で通称名を使用する方法もあります。例えば、名刺、SNS、職場などで通称を使いながら、法的には戸籍名を維持するという形です。
通称名の使用が広く認められれば、将来的に「通称が定着した」として改名の正当な理由になることもあります。
まとめ:姓は比較的改名しやすいが、名前の改名は慎重な審査が必要
姓と名前では、制度的に改名のしやすさに大きな違いがあります。姓は婚姻・離婚などの家庭事情によって比較的簡単に変えることができますが、名前は家庭裁判所の判断が不可欠であり、「正当な理由」の証明が必要です。
改名を希望する場合は、自分の事情が法律上の要件に該当するかどうかを慎重に検討し、場合によっては専門家への相談も検討しましょう。