2023年に刑法が改正され、「不同意わいせつ罪」という新たな犯罪類型が創設されました。それに伴い、「わいせつ行為」の定義が注目されるようになりましたが、その範囲が広くて分かりづらいと感じる方も多いはずです。本記事では、法律上の定義や実際に該当しうる行為を具体例とともに整理して解説します。
不同意わいせつとは何か?
不同意わいせつ罪とは、相手の同意がないにもかかわらず、わいせつな行為を行うことで成立する犯罪です。2023年の刑法改正で新設され、従来の「強制わいせつ罪」に代わる形で導入されました。
この新制度では、「同意のない性的行為」=処罰対象となり、暴行や脅迫がなくても、相手の同意を欠いていれば犯罪が成立する可能性があります。
法律上の「わいせつ行為」とは?
刑法上のわいせつ行為には、明確な定義は存在しませんが、判例や学説の積み重ねから、「性的羞恥心や性的欲求に訴える行為」が該当するとされています。具体的には以下のような行為が挙げられます。
- 性的部位(胸、陰部、臀部など)への接触(手・口・身体など)
- 服の上からでも、性的意図を持った触れ方
- キスや唇への接触(性的な文脈で)
- 下着や衣類を脱がせる行為
- 自慰や性器の露出を見せる
これらの行為は、相手が明確に同意していない限り、不同意わいせつに該当する可能性が高いです。
「広すぎる」と感じる理由と背景
わいせつ行為の範囲が広いと感じるのは、主に「被害者の主観」や「場面の文脈」が重視されるためです。同じ行為であっても、
- 恋人関係での接触か、
- 職場での上司と部下の関係か、
- 突然の行為で驚かされたかどうか
などの状況によって、処罰されるか否かが変わります。
また、「いやがっているようには見えなかった」「拒否されなかったから大丈夫だと思った」といった言い訳は、法律上では通用しにくくなっています。
実際の事例でイメージする
事例1:クラブで知り合った女性に、突然キスをした
→ 同意がなければ、たとえ酔っていても不同意わいせつに該当します。
事例2:エレベーターで背後から胸を触る
→ 同意があるはずがなく、明らかなわいせつ行為です。従来通り重い処罰対象。
事例3:会社の飲み会で膝に手を置く
→ 被害者が不快に感じていて、同意の意思がないと判断されれば該当します。
処罰の対象となるための要件
- 相手の明確な同意がないこと
- 行為に性的な意味が含まれること
- 被害者の証言や状況証拠が一致していること
つまり、「たまたま触れただけ」や「冗談のつもりだった」という言い訳では、正当化されにくいのが現実です。
まとめ
不同意わいせつにおける「わいせつ行為」とは、性的な意味を持ち、相手の同意なしに行われたあらゆる身体接触や性的示唆が含まれます。
範囲が広く感じられるのは、「被害者の感覚」や「社会的文脈」が重要視されるためであり、加害者側が無意識でも処罰対象となるリスクがあるからです。
予防のためには、明確な同意の確認と、相手の立場に立った配慮ある行動が求められます。