高齢化社会の進行に伴い、成年後見制度の活用が増えています。特に障害を抱えた配偶者が施設入居しており、生活費をどう確保するかは家族にとって大きな関心事です。この記事では、夫の財産を成年後見制度のもとでどのように管理し、家族の生活費を支出することができるのかについて詳しく解説します。
成年後見制度とは何か?その基本的な役割
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が十分でない方を支援する制度です。家庭裁判所が選任した後見人が本人(成年被後見人)の財産管理や契約行為を代行・支援します。後見人には親族のほか、専門職後見人(弁護士や司法書士など)が就くことも一般的です。
この制度の目的は、本人の利益を最優先に保護することであり、たとえ家族であっても無制限に本人の財産を使用できるわけではありません。
生活費の支出は可能か?家族の扶養義務と合理性がカギ
成年後見人は原則として、成年被後見人(夫)の財産を本人の生活や療養に必要な支出に限定して管理します。ただし、家庭裁判所の許可や後見人の判断で、家族の生活費として支出が認められるケースもあります。
たとえば、妻と子が夫の収入と財産に一定程度依存していたことが明らかであり、かつ過去からの生活実態として夫の財産から生活費が支出されていたことが裏付けられれば、合理的支出と認められる可能性があります。
妻の預貯金や収入も考慮されるのか?
成年後見制度においては、生活費支出の必要性が判断される際、同居家族(妻や子)の経済状況も考慮されます。つまり、妻がパート収入や預貯金を有している場合、それらを先に活用すべきと判断され、夫の財産からの支出が制限されることもあります。
特に、妻の貯金が十分にある場合は「夫の財産に頼る必要性がない」とみなされやすくなり、生活費支出の継続が困難となるケースもありえます。
過去の生活費支出は問題になる?後見人選任前後での違い
成年後見人が選任されると、その時点から過去の財産管理についても調査が入ることがあります。たとえば、直近の通帳の入出金履歴や大口の現金支出などについては「使途が適切だったか」「家族による不当な流用がなかったか」といった視点で確認される可能性があります。
ただし、明らかに生活実態に基づく支出であり、領収書や記録が残っていれば、過去の支出を問題視されることは少ない傾向です。とはいえ、口座から現金を多額に引き出していた場合などは説明責任が求められることもあるため、記録の整理が重要です。
成年後見人との連携と裁判所への報告が重要
生活費の支出については、後見人との丁寧な連携が不可欠です。妻としては、「過去からの生活費支出の経緯」や「今後の必要性」などを明文化し、裁判所へも報告してもらうよう依頼するとスムーズです。
また、継続的な支出を希望する場合には、家庭裁判所に対して後見人が「定期支出の許可申立て」を行う必要がある場合もあるため、専門家との相談をお勧めします。
まとめ:生活実態と記録を整え、制度と調和させることがカギ
成年後見制度のもとでは、家族といえども被後見人の財産を自由に使えるわけではありません。生活費として支出するには、過去からの生活実態・家族の経済状況・記録の整備が重要な判断材料となります。
不安がある場合は、後見人と早期に話し合いを行い、家庭裁判所と連携しながら法的に適切な支出を目指しましょう。必要に応じて、司法書士や弁護士などの専門家に相談することで、スムーズな家計運営が実現できます。