労働契約書なし・社会保険未加入は違法?雇用主が問われる責任と対処法を解説

働くうえで必要な手続きや契約が適切に行われないと、労働者は大きな不利益を被ることになります。特に、週30時間以上働いていたのに社会保険が未加入だった場合、また労働契約書すら交わされていなかった場合には、雇用主に法的責任が発生する可能性があります。この記事では、労働契約書未交付・社会保険未加入に関する法律上の問題点と企業側が問われる罪、そして労働者として取り得る対処法について詳しく解説します。

労働契約書を交わさないことは法令違反

労働基準法第15条により、労働契約締結時には労働条件を書面で明示する義務があります。これに違反すると、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科されることがあります。

具体的には、「労働時間」「賃金」「契約期間」「休日」などを記載した書面(労働条件通知書または労働契約書)を交付しなければなりません。これがなされていない場合、労働者は労働基準監督署に相談することができます。

社会保険未加入は会社側に重大な責任

厚生年金と健康保険は、原則として週30時間以上働く従業員には加入義務があります。これは「常用的使用関係にある」と見なされるためであり、雇用保険にのみ加入していたというケースは明確に違法の可能性があります。

このようなケースでは、遡及して2年分の社会保険料を支払う義務が事業主に課せられます。会社が拒否した場合には、日本年金機構への通報が有効です。

労働者が取り得る具体的な行動

まずは証拠を集めることが重要です。労働契約書がなくても、出勤記録、給与明細、メールやLINEのやりとりなどがあれば、労働実態を証明できます。

次に、労働基準監督署へ相談することで、会社側へ指導が入ることがあります。また、社会保険未加入については日本年金機構全国健康保険協会(協会けんぽ)に申告可能です。

会社が罪に問われる可能性とは?

労働契約書未交付に関しては前述のとおり30万円以下の罰金対象ですが、社会保険未加入については厚生年金保険法や健康保険法違反となり、悪質なケースでは刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)に問われることもあります。

また、従業員に虚偽の説明をして加入を逃れていた場合は、詐欺罪に問われる余地も否定できません。

実例紹介:加入逃れが発覚して指導・是正されたケース

2023年にはある中小企業が従業員数名を社会保険に加入させておらず、監督署と日本年金機構の調査の結果、2年分の保険料を遡って徴収された事例があります。この企業は再発防止の指導を受け、従業員全員に適切な労働条件通知書を発行するよう改善されました。

このように、労働者側からの通報や相談がきっかけで是正されることが多く、声を上げることが制度改善につながるのです。

まとめ:契約書と社会保険は働くうえでの最低限の権利

労働契約書の交付と社会保険の加入は、労働者の権利を守るための基本中の基本です。これらが守られていない場合には、会社側に法的責任が発生することを知っておきましょう。

もし現職や過去の勤務先で同様の問題があった場合は、労働基準監督署や日本年金機構などの公的機関に相談し、適切な対応を促すことが重要です。泣き寝入りせず、行動に移すことが労働環境の改善につながります。

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