海外で生活する日本人にとって、言語の壁は大きなストレスとなりがちです。特に家族や親族との日常会話で、通訳機器や翻訳アプリを使う場面も増えてきました。しかし、こうしたテクノロジーの使用が「プライバシーの侵害」や「名誉毀損」などの法律に抵触するのでは?という不安の声も聞かれます。この記事では、日本から香港に移住した家庭の事例を元に、翻訳機の利用と法律の関係について解説します。
翻訳機の使用がプライバシー侵害になる可能性は?
一般的に、家族内の会話をリアルタイムで翻訳機に通して理解する行為自体が、即座に「プライバシーの侵害」とされることは少ないです。特にその場に本人がいて、会話の意図や内容に合意がある場合、違法性はほとんどありません。
ただし、録音・記録・無断保存が絡むと話は別です。W4PROのような通訳機が「記録機能」や「サーバー送信機能」を持つ場合、それを明示せずに使用することは相手のプライバシーを害する可能性があります。
日本の法律上の観点:通訳機とプライバシー権
日本では「プライバシー権」は憲法13条によって保護されており、個人の私的な情報や生活が無断で記録・公開されることに制限があります。
ただし、家庭内での翻訳機使用が裁判などで問題とされるケースは稀です。家族間での使用においては、「明確な悪意」や「録音・保存」などの行為がなければ、違法性は成立しにくいといえるでしょう。
香港・中国におけるプライバシー保護の考え方
香港では「個人資料(私隱)条例(PDPO)」があり、個人情報や通信内容の保護に関する規定が存在します。基本的には第三者による不正な録音・収集が問題視されますが、家庭内での通訳使用に対して明確な違法とはされていません。
ただし、香港では会話の録音・共有は相手の許可が必要とされる文化があり、無断で家族の言葉を第三者に見せたり聞かせたりする行為は、信頼関係に影響するリスクがあります。
一方、中国本土ではサイバーセキュリティ法や民法典により、個人の会話や情報の無断収集は原則禁止とされ、強い監視体制が敷かれています。ただし家庭内での通訳機使用を直接制限する法令は明文化されていません。
「翻訳して」=「家族に任せるべき」という意見の背景
家族内での翻訳機使用に否定的な意見は、必ずしも法的問題ではなく、「感情的・文化的」な摩擦に起因することが多いです。翻訳内容が誤解を生む、機械的すぎて温度感が伝わらない、第三者(AI)に会話を聞かれる不快感などが主な理由です。
特に高齢の親族や伝統的な価値観を重んじる家庭では、「家族の言葉は家族が通訳すべき」と考える傾向があります。この場合、法律的にどうかよりも、相手の心情に寄り添った対応が求められます。
トラブルを避けるために取るべき対応策
- 翻訳機の使用について事前に合意を取る:「この通訳機は音声のみで記録されないよ」と説明することで不安感を和らげられます。
- 一部は家族に翻訳をお願いする配慮:特に重要な会話(感謝、謝罪、相談など)は人の言葉で伝えるのが効果的です。
- プライバシー保護機能のある通訳機を選ぶ:ログが残らない・サーバー保存されない機種を選ぶと安心です。
また、相手が不快感を表明している場合は、機械翻訳に頼らず、通訳アプリや筆談などの方法も併用するようにしましょう。
まとめ:翻訳機の使用は原則違法ではないが、配慮が最優先
翻訳機の使用は日本・香港・中国いずれにおいても、プライバシーや名誉を侵害する目的でなければ違法とされることは少ないです。しかし、家族間という繊細な関係性においては、法的リスク以上に「信頼」や「思いやり」が重要です。
翻訳機はあくまで「言葉の補助ツール」として活用し、相手の気持ちに耳を傾ける姿勢を持つことで、より円滑なコミュニケーションが実現できます。