歌舞伎町などのナイトワーク業界では、売上ノルマや“掛け”(ツケ)制度が存在する店舗も少なくありません。学業や生活との両立が難しく、掛けを残したまま辞めたいと考える人もいますが、その行動には法律上・実務上のリスクが伴います。今回は、掛けを残したまま「飛ぶ」ことの危険性や、実際に起こりうるトラブル、そして可能な回避策について解説します。
そもそも「掛け」とは何か?仕組みをおさらい
ホストクラブにおける「掛け」とは、いわゆる“ツケ払い”制度のことを指し、売上計上だけを先に行い、後から自腹で立て替えるケースなども含まれます。売上の水増しやランキング競争の影響で、現金が入っていないにもかかわらず売上を上げる行為が常態化する店もあります。
一部店舗では「締め日」までに支払いを済ませないと、店の責任で回収されるというルールがあることから、ホスト自身が債務者として責任を負うことになります。
掛けを残して飛ぶ行為は違法?法的リスクを解説
掛けの内容が契約書やLINE、書面などで明文化されている場合、民事上の「債務不履行」に該当し、損害賠償請求の対象となる可能性があります。金額が大きければ、簡易裁判所で支払督促や訴訟を起こされることも理論上は可能です。
ただし、ホストクラブ業界では訴訟に発展するケースは稀で、多くは“泣き寝入り”や店舗内処理で終わる場合が多いです。その一方で、飛んだ後に店側から「代理回収業者」や「同業者ネットワーク」に情報が共有されることもあるため、業界内での再就職に影響する恐れがあります。
「今どき掛け禁止」の流れが加速中?
2020年代以降、ホスト業界全体で健全化の動きが強まり、「掛け制度」を禁止または大幅制限する店舗が増加しています。これは、金銭トラブルや売上の虚偽計上が社会問題化し、SNS上でも告発が相次いだことが背景にあります。
そのため、最近では「現金即日入金」が原則となる店が主流になりつつあり、掛けを理由に辞められないという状況は徐々に減りつつあるのが実情です。
実際に飛んだらどうなる?体験談とケーススタディ
ある元ホストの証言では、「20万円の掛けを残して辞めたところ、店から電話が数回きただけで終わった」と語ります。しかし、別のケースでは、「後から同業の系列店に情報が回り、再就職時に内定を取り消された」という報告もあります。
また、SNSや匿名掲示板に実名・顔写真を晒されたというトラブルも起きており、金銭以上に精神的負担が大きくなる可能性も否定できません。
できる限りトラブルを避けるための方法
最も推奨されるのは、可能な限り正式な手続きで辞めることです。1ヶ月前申告が難しい場合でも、責任者に事情を説明し、分割払いや減額交渉を試みることで、穏便に済ませられる可能性があります。
また、退店届などの書面を提出しておくと、後日の証拠として有効になる場合があります。必要に応じて、弁護士に相談することで、法的リスクを最小限に抑えることもできます。
まとめ:掛けを残した“飛び”は自己責任、回避策はある
ホストクラブにおける掛けを残しての退店は、法律的にも業界内的にも一定のリスクを伴います。とはいえ、訴訟リスクは低いものの、情報共有や再就職への影響といった“見えないリスク”が存在します。
後悔を防ぐためにも、できる限り誠実な対応を心がけ、金銭的な問題がある場合は交渉や第三者の助言を仰ぐことが、トラブル回避への第一歩となるでしょう。