親族の死去に伴い自動車を相続する可能性がある中で、相続放棄を検討している最中に「車検の期限が迫っている」というケースに直面することがあります。このような状況では、車検を通すべきかどうか、判断に迷う方も少なくありません。本記事では、法的観点と実務上のリスク、費用面を踏まえ、最も適切な対応策を解説します。
相続放棄と車の所有関係の基本
相続放棄とは、被相続人(故人)の財産や負債を一切相続しない意思を家庭裁判所に届け出て認められる手続きです。相続放棄をすれば、その人は最初から相続人でなかったことになり、車を含む一切の遺産にも関与できなくなります。
つまり、放棄が受理されるまでは形式上「相続人」であり、車も「相続予定財産」とみなされるため、管理責任や放置による事故・違反のリスクにも一定の注意が必要です。
車検を通すことのリスクと判断基準
相続放棄を検討している段階で車検を通すことは、財産の処分とみなされるおそれがあります。特に高額な支出を伴う場合、「相続する意思あり」と解釈されて放棄が認められない可能性があるという点に注意が必要です。
家庭裁判所のガイドラインでは、相続財産に手を付けること(換金・譲渡・大規模な修理など)は放棄前に避けるべきとされています。車検もこの一環と見なされる可能性が高いため、原則として控えるのが安全です。
車検を見送った場合の影響と注意点
車検切れの車両をそのままにしておくこと自体は違法ではありませんが、公道を走行させることは厳しく禁止されており、違反すると罰金や免許停止などの重い罰則が科される可能性があります。
また、車庫に保管されていても、ナンバープレートが付いたままの場合は自動車税が継続して課されるため、長期間そのままにするのは非効率です。
おすすめの対応方針
相続放棄を検討している場合、車検は見送り、以下のような対策を講じるのが現実的です。
- 一時抹消登録を行い、自動車税や保険料の発生を停止させる
- 家庭裁判所で放棄申述書が受理されるまでは物理的に動かさず、安全に保管
- 放棄後に次順位の相続人や他の親族に状況を伝える
一時抹消登録には、運輸支局での手続きとナンバープレートの返納が必要です。遺産分割が未了の段階では可能かどうか地域によって対応が異なる場合もあるため、国交省や運輸支局に事前確認を取りましょう。
実例:相続放棄と車検タイミングのトラブル回避例
ある相談者は、父親の死後すぐに車検が迫っていたが、相続放棄を希望していたため、あえて車検を通さず、駐車場内で保管。その後、放棄が受理されたため、次順位の相続人が車両を売却・廃車処分し、問題を回避できたとのこと。
一方、車検を通したことで放棄が認められず、多額のローンや税金を引き継ぐ結果になったというトラブルもあります。特に高級車・ローン付き車両は要注意です。
まとめ:車検は原則控え、相続放棄が確定してから動くのが安全
相続放棄を検討している段階では、車検の実施は控えるのが原則です。不要な支出が“相続の意思あり”と判断されかねないため、家庭裁判所の判断が確定するまでは慎重に行動すべきです。
一時抹消登録や保管方法を工夫することでリスクは最小限に抑えられるため、専門家や管轄の運輸支局に相談しつつ、適切に対応しましょう。