公共工事に参加する際、最低制限価格や公表工事価格とのズレに戸惑うことは少なくありません。特に、開示請求で得た「直接工事費」のみをもとに価格を算出し、実際の公表価格と数万円から数十万円単位で乖離している場合、さまざまな原因が考えられます。本記事では、よくあるズレの原因とその確認ポイントについて解説します。
直接工事費と工事価格とのズレが起こる理由
直接工事費は、労務費・材料費・機械経費を中心とした実工事費ですが、工事価格全体にはそれ以外の間接経費が多数含まれます。そのため、直接工事費だけを元に工事価格を逆算しても、正確な値にはなりません。
特に次のような間接経費が影響します。
- 共通仮設費:現場の仮囲いや仮設電気などの準備費用。
- 現場管理費:現場監督の人件費や安全管理費など。
- 一般管理費等:本社経費や企業運営に係るコストなど。
これらは定率計上されることが多く、発注者によって係数が異なるため、直接工事費からの単純な逆算では一致しないことがあります。
最低制限価格の計算とズレの主な要因
最低制限価格の計算は国や自治体が定めた方式に基づいていますが、以下のような点により、ズレが生じることがあります。
- 経費率の端数処理:計算時に端数処理(四捨五入・切捨て)をどの時点で行うかで総額に違いが出ます。
- 経費率の年度別変更:年度や地方自治体によって係数(率)が改定されることがあります。
- 設計変更:開示資料が設計変更前のものである可能性があります。変更後の設計書と一致しているか確認が必要です。
- 歩掛・単価の誤認:土木積算基準における歩掛(作業量に応じた単価)を誤って使用すると、合計が大きく変わります。
実際に5万円~30万円のズレが生じるケースでは、経費率の適用ミスや共通仮設費・現場管理費の計上漏れが最も多く報告されています。
見落としがちな積算ミスの例
公共工事積算でよく見られる誤差の原因には以下があります。
- 積算基準の違い:国土交通省基準と自治体基準での係数の違い。
- 端数処理のタイミング:直接工事費に対して率を掛けたあとに丸めるか、各項目ごとに丸めるか。
- 補正係数の未適用:特殊地域補正・規模補正などの適用漏れ。
- 歩掛単価の年次ズレ:最新版でない積算資料を使用した。
このようなズレは、積算ソフトの設定ミスや、参考資料の選定違いで起こることも多いため、再チェックが必要です。
確認すべき資料と相談先
ズレの原因を把握するには、以下の資料を見直しましょう。
- 開示された積算内訳書の工種別項目
- 各経費(共通・現場・一般)の率と計算根拠
- 設計変更履歴書・設計変更通知
- 積算基準・歩掛表(最新年度)
また、不明な場合は以下のような機関へ確認を取るのも有効です。
- 発注元の契約担当課
- 地方整備局または建設事務所
- 建設業協会(積算講習会などを実施)
まとめ
公共工事の価格における数万円から数十万円のズレは、積算方法・経費率・端数処理・設計変更といった複合要因によって生じます。正確な比較のためには、発注者と同様の積算基準・率・処理方法を採用することが前提です。違いを洗い出すために、最新の積算基準や設計変更資料の確認を行い、必要に応じて相談窓口へ照会することが望ましいでしょう。