インターネット掲示板「爆サイ」などでの書き込みに対して、名誉毀損や侮辱といった法的リスクを問うケースが増えています。本記事では、ニックネームやイニシャルでの投稿が法的にどこまで問題になるのか、実際に訴訟へ発展する可能性について解説します。
ニックネームや伏字でも名誉毀損が成立する可能性がある
名誉毀損は、「特定の個人を社会的に評価を下げる形で公然と示す」ことによって成立します。つまり、実名でなくても「誰のことを指しているか」が第三者に推測できれば、名誉毀損が成立する可能性があります。
たとえば、「△△は化けの皮つるむと嫌な思いをする」という投稿があり、それが掲示板上の文脈や過去の投稿から特定の人物であると認識できる場合、その人物は被害者として名誉毀損の訴訟を起こすことが可能です。
侮辱罪や業務妨害に該当するケースも
内容が抽象的であっても、投稿の趣旨や文脈によっては侮辱罪(刑法231条)や信用毀損・業務妨害(刑法233条)にも該当する可能性があります。
例として、ある店舗や事業者が「〇〇は詐欺だ」「関わると損をする」などと書き込まれた場合、被害者は書き込み内容によって、民事・刑事両面で対応を検討できます。
開示請求の流れと訴訟までのステップ
書き込みが違法性を持つと考えられる場合、まずはプロバイダ責任制限法に基づき投稿者のIPアドレス開示請求を行います。その後、IPアドレスを元に接続プロバイダに発信者情報開示請求をかけ、投稿者を特定します。
特定が完了すれば、被害者は民事訴訟(損害賠償請求)や刑事告訴を起こすことができます。なお、このプロセスには相応の費用と時間がかかるため、弁護士への相談が重要です。
実例:伏字でも訴訟に発展したケース
過去の裁判例では、匿名掲示板上で「TAR〇」などの伏字が使われたものでも、「当該地域や業界関係者には誰を指しているかわかる」と認定され、名誉毀損が成立した判例があります。
たとえば、東京地裁平成28年の判決では、芸能人の愛称をもじった書き込みが、読者の間で本人と認識される内容であることから、投稿者に賠償命令が下されました。
投稿が「面白半分」であっても免責されない
たとえ投稿者が悪意なく「冗談」「軽い気持ち」で書き込んだとしても、法的責任が免除されることはありません。発信内容が対象者の社会的評価を低下させると判断されれば、訴訟対象となりえます。
インターネット上での発言は、公開されたものである以上、責任が伴うことを認識しておくべきです。
まとめ:ニックネームや伏せ字でも注意を
爆サイなどの掲示板では、ニックネームや伏字であっても、文脈によっては特定の人物を指しているとみなされ、名誉毀損・侮辱・業務妨害に該当する可能性があります。被害者は法的手段によって投稿者を特定し、損害賠償請求などの対応が可能です。トラブルを避けるためにも、ネット上での発言には十分な注意が必要です。