婚姻費用(婚費)は、夫婦の生活保持義務に基づいて定められるものであり、収入状況の変化に応じて金額を見直すことができます。特に、課税証明書などから明らかに年収が増加している場合、既に合意または調停で決まっている金額についても再検討する余地があります。本記事では、再調停の必要性や実務的な対応方法について詳しく解説します。
婚姻費用の再調整は可能なのか?
家庭裁判所の運用においては、婚姻費用分担義務は「生活保持義務」に基づく継続的義務であり、収入や扶養状況に変動があった場合には金額の見直しが可能です(民法760条)。
つまり、一度取り決めた婚姻費用であっても、支払義務者の収入が大幅に上昇した場合は、婚姻費用の増額を家庭裁判所に申し立てることができます。
年収増加の証拠としての課税証明書の活用
再調停や審判を申し立てる際には、収入の変動を客観的に示す資料が必要です。その際に有効なのが最新年度の課税証明書です。
例として、2024年に取り決めた婚姻費用に基づき支払が行われていたが、2025年の課税証明書で年収が150万円以上上がっていた場合、婚費算定表に照らしても再計算結果に差異が出るため、調停申立ての実務的根拠となります。
再調停は必要?それとも話し合いで解決可能?
婚姻費用の変更は、当事者間で合意ができれば家庭裁判所を通さずに増減額の調整が可能です。例えば、年収アップに納得した上で当事者間で合意書を交わせば、法的にも有効とされます。
ただし、話し合いがまとまらない場合や、相手が支払い増額に応じない場合は、家庭裁判所に対し「婚姻費用分担額の変更調停」を申し立てる必要があります。
再調停の流れと必要書類
再調停の手続きは、最初の調停と基本的に同様です。申立先は「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」で、必要書類は以下の通りです。
- 婚姻費用分担額変更調停申立書
- 課税証明書(直近2年分が望ましい)
- 収入証明(給与明細、源泉徴収票)
- 前回の調停調書または合意書
また、相手方の収入にも変化がある場合には、その情報も同時に収集する必要があります。
実例:再調停で増額が認められたケース
たとえば、2024年12月に婚姻費用を月5万円で合意した夫婦が、2025年度に夫の年収が600万円から850万円に増加したことが判明。妻側が家庭裁判所に再調停を申し立てた結果、月額が8万円に増額された判例も存在します。
このように、裁判所は実際の収入変動に基づいて柔軟に判断してくれます。
まとめ
婚姻費用は一度決まったからといって永続的なものではなく、収入の増減に応じて見直すことが可能です。課税証明書などで年収の変化が確認できる場合には、話し合いか再調停を通じて適切な支払額に調整することが望ましいです。相手と協議できない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担額の変更調停」を申し立てることで、公的に再評価を受けることができます。