寄付や寄贈は善意による行為ですが、後々のトラブルを防ぐためにも、契約書の作成が推奨されるケースが少なくありません。特に金銭や高価な物品、不動産、企業の資産などを伴う場合、明確な意思表示や条件を文書で残すことが重要です。
寄付・寄贈に契約書は必要か?
民法上、寄付や寄贈は「贈与契約」に該当します。口頭でも成立するのが原則ですが、契約内容に条件が付く場合や、高額な資産を移転する場合には書面化が強く推奨されます。
たとえば、「寄付を受けた側がその用途を教育支援に限定する」といった条件がある場合、書面による明文化が後の証明材料になります。口約束では解釈の違いが生じやすく、紛争の火種になりかねません。
契約書作成が特に有効なケース
- 企業が団体や自治体に資金・設備を寄付する場合
- 美術品や建築物など高額資産の寄贈
- 相手に使用条件や返還義務を課す場合
- 税務申告での証明が必要な場合
たとえば、法人がCSR活動として大学に研究費を寄付するケースでは、寄付の趣旨や使途、金額、返金義務の有無などを明文化した契約書が作成されるのが一般的です。
契約書に盛り込むべき主な内容
寄付や寄贈における契約書は、以下のような項目を盛り込むことが望まれます。
- 当事者の氏名・名称と住所
- 寄付・寄贈の目的
- 寄付・寄贈の内容(品目、金額、数量など)
- 実施日・引渡し日
- 使途制限や条件
- 万一の返還規定
特に税制優遇(寄付金控除など)を受ける際は、契約書や受領書の提示が必要になる場合があり、記録として残す意味でも重要な役割を果たします。
実務的な注意点と専門家の関与
契約書を自作することも可能ですが、法的効力や証拠能力を高めるためには、行政書士や弁護士にチェックしてもらうことが安心です。特に財産価値が高い物件の場合は、登記の手続きや税務への影響も伴うため、専門家の関与は不可欠です。
また、法人同士の寄付では、社内稟議書や合意書といった別途書類の整備も求められることがあります。
まとめ:善意の贈与も、記録を残すことが信頼につながる
寄付や寄贈は感謝や信頼を前提とする行為ですが、文書で明確な合意を残すことで、誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。特に高額・条件付きの場合には、契約書を通じて双方が安心してやり取りできる関係を築くことが大切です。
善意だからこそ、「あえて契約書を作る」という姿勢が、真摯な寄付・寄贈の証になるのです。