街中や公共交通機関で発生するスリ行為は、刑法上の「窃盗罪」に該当します。スリは軽犯罪と思われがちですが、被害額の大小や犯行態様に関係なく、社会的に重く見られることも多くあります。特に「前科がないから大丈夫」と考えていると、思わぬ重い刑罰を受けることもあります。この記事では、スリ行為が初犯であっても実刑になる可能性について、実際の裁判例や量刑の傾向をもとに解説します。
スリは刑法何条にあたる?
スリ行為は刑法第235条の「窃盗罪」に該当します。条文は以下のとおりです。
刑法第235条:他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
つまり、スリは軽微な犯罪ではなく、最大で10年の懲役刑が科されうる重大な犯罪として扱われます。
前科・前歴なしでも実刑になることはある?
結論から言うと、スリは前科や前歴がなくても、犯行の悪質性や被害額、反省の度合いなどによっては実刑判決が下されることがあります。
特に、以下のような場合には、執行猶予がつかずに一発実刑となる可能性が高まります。
- 混雑した電車内など計画的な環境での犯行
- プロの手口を思わせる巧妙な手法
- 高齢者や障害者など社会的弱者を狙った
- 複数回のスリ行為が立証された
一方で、反省の意思が強く、被害弁償や示談が成立している場合などは、初犯であれば執行猶予付きの判決となるケースもあります。
実際の判例から見る傾向
例えば、ある裁判例では初犯で駅構内において財布を盗んだ被告人に対し、懲役8か月・執行猶予3年が言い渡されました。被害額は約2万円、示談も成立していました。
一方で、別の事件では同様に初犯でも「職業的スリ」と認定され、懲役1年6か月・実刑判決となったケースもあります。このように、裁判所は被告人の生活背景や再犯リスクを重視して判断を下しています。
不起訴になる可能性や処分の選択肢
逮捕されても、必ず起訴されるわけではありません。特に初犯で反省が深く、被害者への謝罪と示談が成立していれば、不起訴処分となることもあります。
不起訴の種類には以下のようなものがあります。
- 起訴猶予:罪はあるが、情状酌量により起訴しない
- 嫌疑不十分:証拠が不十分
- 嫌疑なし:そもそも犯罪行為ではなかった
不起訴になるかどうかは、警察や検察の判断に大きく依存するため、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
スリ行為がもたらす社会的・法的影響
実刑判決が下されれば刑務所での服役となり、前科がつきます。また、スリ行為は信用を著しく失墜させる行為であり、就職・転職・資格取得・海外渡航にも悪影響が出ることがあります。
特に青少年や学生の場合、学校や家庭への報告義務が生じたり、進学・就職に影響を与える可能性もあります。
まとめ
スリは刑法上の「窃盗罪」にあたり、前科や前歴がない初犯であっても、状況によっては実刑になる可能性があります。犯行の計画性、悪質性、被害額、反省の度合いなどが量刑判断のポイントです。実刑を回避するには、早期の反省と示談、弁護士への相談が極めて重要です。スリは決して軽い犯罪ではないことを認識し、再発防止に努める必要があります。