「きも」と発言することは権利侵害になる?侮辱罪や名誉毀損との関係を解説

日常的な会話やSNSなどで、つい感情的な言葉を使ってしまうことがあります。しかし、その一言が思わぬ法的トラブルにつながることもあります。特に「きも(気持ち悪い)」という言葉は、相手を不快にさせるだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあるのです。

「きも」は侮辱罪に該当する可能性がある

相手に「きも」と言った場合、それが公共の場や不特定多数が閲覧可能な場面であれば、侮辱罪(刑法231条)に該当する可能性があります。侮辱罪とは、具体的な事実を挙げずに人の社会的評価を低下させるような言動を行うことを罰する法律です。

例えば、SNSで個人名を挙げて「きも」と発言した場合、その人の社会的評価を著しく損なう可能性があるとされ、刑法上の侮辱罪に問われることがあります。過去には「ブス」「死ね」などの単語で実際に有罪となった判例もあります。

名誉毀損との違いとその可能性

一方で、名誉毀損罪(刑法230条)は「具体的な事実を摘示して、相手の社会的評価を下げる行為」を処罰対象としています。つまり「きも」だけでは原則的に名誉毀損にはあたらず、どちらかというと侮辱罪の適用が検討される場面が多くなります。

ただし、「気持ち悪い行動をしている」「ストーカーみたいだ」といった具体性を持たせた発言であれば、名誉毀損が成立する余地が出てきます。

民事上の不法行為に該当する可能性も

刑事責任だけでなく、民法709条に基づく不法行為として損害賠償請求される可能性もあります。たとえば、繰り返し「きもい」と言い続ける、SNSで拡散するなど、相手に精神的苦痛を与えるレベルになると慰謝料請求が認められるケースも存在します。

2022年に発生した誹謗中傷問題の増加を受け、裁判所は「一言でも相手の人格を傷つける言動」が繰り返されることで、違法とされる傾向を強めています。

発言の場面と文脈がカギになる

同じ言葉でも、言った場所や相手との関係性、文脈によって評価が大きく異なります。冗談や仲間内でのやり取りであれば違法とまではならないことが多いですが、職場・学校・SNSなど、対人関係において不適切とされる場面では法的責任を問われる可能性が高くなります。

たとえば、職場で上司や同僚に対して「気持ち悪い」と発言した場合は、パワハラやモラハラとして社内規定に基づき処分されることもあるため注意が必要です。

言葉の選び方があなたの信用を守る

現代社会では、個々人が情報発信者であると同時に、法的リスクの管理者でもあります。感情的になって言葉を選ばずに発言すると、自分の社会的信用や関係性を損なう可能性があります。

「たった一言」が損害賠償や刑事責任に発展する時代であることを自覚し、冷静な言動を心がけることが重要です。

まとめ

「きも」と発言すること自体が即違法になるわけではありませんが、状況によっては侮辱罪(刑法231条)や不法行為(民法709条)に該当し、相手から法的措置を取られるリスクがあります。発言の内容、文脈、場面をよく考え、他者への配慮を忘れないことが、不要なトラブルを防ぐ鍵となります。

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