交差点での交通事故の中でも、右直事故(右折車と直進車の接触)は特に過失割合が複雑で、事故状況によって大きく判断が変わるケースです。この記事では「左折ウインカーを出したまま直進してきた直進車」と「右折しようとした車」が接触した場合の事故に焦点を当て、過失割合の考え方や実際の判断ポイントを詳しく解説します。
事故の典型状況を整理する
今回想定されるケースは以下のような状況です。
- 片側2車線の交差点
- 右折車は対向車の左折ウインカーを確認し、右折を開始
- しかし対向車は左折せず、第二通行帯を直進して衝突
このような状況では、「ウインカーの誤信」による事故とみなされる可能性がありますが、同時に「右折車の注意義務違反」も問われることになります。
ウインカーを出したまま直進は過失になるか
道路交通法上、ウインカーは「進路変更または方向転換の意思表示」ですが、実際にその方向へ進行しないのであれば、他の車両を誤認させる原因になります。特に交差点手前で左折ウインカーを出していながら、そのまま直進する行為は不注意運転と判断される可能性があり、過失を問われる余地があります。
ただし、ウインカーの誤使用があったとしても、「右折車が安全確認を怠った」場合は、右折車側にも重大な過失が認定されます。
右直事故の基本的な過失割合とは
一般的な右直事故では、「右折車7:直進車3」の過失割合が基本とされています(判例タイムズに準拠)。ここに「左折ウインカーの誤認」という特殊要素が加わると、直進車の過失が増加することもあります。
実際の修正要素としては。
- 直進車がウインカーで誤認させた → 直進車の過失が10〜20%増
- 右折車が信号無視・強引な進入をした → 右折車の過失が増加
これらを加味すると、今回のケースでは「右折車6:直進車4」や「5:5」に修正される可能性もあります。
交差点の交通慣習と過失割合への影響
質問にあったように「慣例的に右折車が我が物顔で第二通行帯へ入ってくる」という状況は、事故が起きやすい交差点であることを示唆しています。しかし、法的には「交通ルール>慣習」であり、交通慣習が過失割合を正当化する要素にはなりません。
また、左折車や直進車が第二通行帯に進むことも一般的であり、右折車が優先されるわけではありません。したがって、右折車が「空いていたから行った」という主張は安全確認を怠ったとみなされることがあります。
実例から見る:判例と裁判所の考え方
過去の判例では、以下のような事例があります。
事例:対向車が左折ウインカーを出していたため右折したが、実際には直進されて衝突。
判決:直進車に10%の過失が認定されるも、右折車の安全確認義務が重く、右折車90%・直進車10%となった。
つまり、ウインカーによる誤認があっても、右折車の安全確認不足がより重く評価される傾向にあります。
まとめ
「左折ウインカーを出したまま直進した車」と「右折車」が衝突した場合、過失割合は一概には言えませんが、基本は右折車が重い責任を問われることになります。ただし、ウインカーの誤使用という特殊事情があれば、直進車の過失が10〜20%程度加算され、「6:4」「5:5」と修正される可能性があります。
交差点では慣習に頼らず、常に“相手の動きが完全に確認できるまで進行しない”ことが、安全運転の基本です。