株式会社の機関設計において、取締役の選任や代表取締役の決定は法律上厳格に定められています。特に公開会社(株式譲渡制限のない会社)においては、会社法上の制約により、株主総会の権限にも限界があります。本記事では、「株主総会で代表取締役を選定できる旨の定款の定めは有効か」という論点について、法的根拠を踏まえて詳しく解説します。
会社法における代表取締役選任の原則
会社法第362条は、取締役会設置会社における代表取締役の選定について明記しています。特に、取締役会設置会社では代表取締役は取締役の中から取締役会によって選定されることが定められており、これは公開会社においてはほぼ必須となります。
したがって、定款で「代表取締役を株主総会で選任する」と定めたとしても、会社法に反するため無効とされます。これは、会社の機関設計における基本的な法的秩序の問題であり、柔軟に変更できる事項ではありません。
株主総会と取締役会の権限分配
公開会社における株主総会の権限は、会社法第295条第2項により「法律又は定款に定められた事項」に限定されます。一方、代表取締役の選定は会社法第362条第2項第3号により、取締役会の専権事項とされています。
そのため、株主総会が代表取締役を選ぶことは制度上予定されておらず、たとえ定款で定めたとしても効力は生じません。
実務上のトラブルとその回避策
もし誤ってそのような定款規定を設けた場合、登記手続きにおいても不備として扱われる可能性が高く、実質的に効力を持たせることは困難です。
公開会社において代表取締役を誰にするかの意思を反映させたい場合は、株主が取締役会の構成に影響を与える形で株主総会で取締役を選任し、その後取締役会で代表取締役の選定を促す方法が現実的です。
特例有限会社・非公開会社との違い
一方で、非公開会社や特例有限会社(旧有限会社)では、代表取締役を株主総会で選定できるように定款で定めることが認められています。これは会社法の規定により柔軟な機関設計が許されているからです。
したがって、制度上そうした設計が可能なのは非公開会社など特定の形態に限られ、公開会社では不可である点に注意が必要です。
まとめ
公開会社において、定款で「代表取締役を株主総会で選定する」と定めることは、会社法に反するため無効です。代表取締役の選定は、会社法第362条により取締役会の専権事項とされており、株主総会の権限に含まれていません。
このような法的枠組みを理解し、定款設計や会社運営に活かすことで、将来的なトラブルの回避にもつながります。