離婚後でも発生する?妊娠中の妻が出産を選んだ場合の養育費と父親の法的責任

離婚を前提とした夫婦間で妊娠が判明し、出産の意思を持つ場合、父親にとっての法的責任や養育費の義務がどのように扱われるのかは重要なテーマです。ここでは、家族法の観点からその問題に迫ります。

養育費は父親の同意とは無関係に発生する

養育費とは、子どもを扶養するための費用であり、両親に法的義務があります。たとえ父親が出産に反対していたとしても、子どもが誕生すれば父親にも法的責任が発生します。これは民法第877条に基づく扶養義務によるものです。

例えば、夫婦が妊娠3ヶ月の段階で離婚したとしても、出産後に父親であることが法的に認められれば(通常は婚姻中の妊娠であるため自動的に推定されます)、養育費の支払い義務が生じます。

婚姻中の妊娠における父子関係の法的推定

民法第772条により、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます。このため、離婚届を提出した時点で妊娠していた場合、その子は元夫の子として法的に扱われます。父親が認知しなくても、戸籍に父親として記載される可能性が高いです。

仮に父親が親子関係を否認したい場合、出生後に「嫡出否認の訴え」を起こす必要がありますが、認められるハードルは非常に高いです。

養育費の金額と支払い期間

養育費の金額は、家庭裁判所の算定表に基づき、両親の収入や子どもの年齢などを考慮して決まります。例えば、父親の年収が500万円で母親が専業主婦の場合、月額4~6万円程度となるケースが一般的です。

支払いは原則として子どもが成人するまで(2022年の法改正で原則18歳まで)ですが、高校卒業や大学進学の事情に応じて延長される場合もあります。

協議離婚時の取り決めが重要

離婚前に妊娠が判明している場合、協議離婚の際に養育費や親権、面会交流などについて公正証書や調停調書で取り決めておくことが重要です。公正証書にすれば、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行が可能になります。

離婚後にトラブルになるのを避けるため、感情的な対立を超えて、法的にしっかりとした合意形成が求められます。

父親の意思と子どもの権利は切り離されている

「産みたくない」「育てたくない」という父親の希望があったとしても、それは母親の出産の自由や子どもが生まれたあとの権利とは法的に切り離されています。つまり、父親が出産に反対していたという事実が養育費の支払い義務に影響を及ぼすことはありません。

子どもの最善の利益を守ることが、日本の家族法の基本原則であるためです。

まとめ

離婚予定の夫婦であっても、妊娠中に離婚が成立し、妻が出産を選んだ場合、元夫は法律上の父親として養育費の支払い義務が生じます。出産の選択が父親の同意に基づかない場合でも、民法により子どもの権利が保護されるためです。感情や事情が複雑な場合でも、法的な視点から冷静に対応し、公正な取り決めをすることが重要です。

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