フリーランスとして企業と仕事をする際、契約書を取り交わさずに業務を開始してしまうケースは意外と少なくありません。しかし、後々トラブルに発展することも多く、適切な対応が求められます。この記事では、契約書なし・口約束で始めた仕事のリスクと、契約内容の齟齬が発生した場合の対処方法について解説します。
口約束による業務委託の危険性とは
業務委託契約において、書面による契約がない場合でも契約は法律上成立します。しかし、後から「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、フリーランス側が不利になることもあります。
例えば「月末までに5本記事を納品すれば10万円支払う」と口頭で合意しても、相手が「3本しか頼んでいない」と言い出した場合、証明手段がないと報酬の未払いなどの問題に発展する恐れがあります。
契約書がない場合に齟齬が発生したら
契約内容に食い違いが発生した際は、まずは冷静に記録を確認し、やり取りの履歴(メール、チャット、メッセージなど)を整理しましょう。これが実質的な契約の証拠となる可能性があります。
また、作業内容の記録や納品物の提出日などを証明できると、業務が遂行されたことを主張しやすくなります。証拠が弱い場合は、穏やかに話し合いの場を設けるのが現実的な解決への近道です。
撤回・契約解除を申し出る方法
「退職届」のような形式で解除の意思を伝える必要はありませんが、フリーランスの場合も業務の途中放棄は原則NGです。ただし、報酬未払いなど相手に契約違反がある場合は、契約解除が可能になるケースもあります。
解除を申し出る際は、文書やメールなどで「○月○日をもって契約を終了したい」と明確に伝えると良いでしょう。必要に応じて、簡単な通知書や合意書を作成することも検討してください。
実例:口約束からトラブルになったケース
あるデザイナーは、企業からロゴ制作の依頼を口頭で受け、数案を作成・納品しました。しかし、その後「やはりイメージに合わない」と一方的に報酬支払いを拒否されてしまいました。
このケースでは、メールでの作業指示や納品データが証拠となり、弁護士を通じて報酬の一部を回収することができました。こうした例からも、記録の保存と証拠化の重要性がわかります。
契約書がなくても備えておくべきポイント
今後トラブルを避けるためには、少なくとも以下の情報を文章化し、相手と合意をとっておくことが有効です。
- 業務の内容・範囲
- 納期や作業スケジュール
- 報酬の金額・支払時期
- 修正対応やキャンセル規定
これらは簡単なメールでも構いませんが、できればPDFなどにまとめて双方確認するのが望ましいです。
まとめ:フリーランスも「契約管理」が必須の時代
契約書がなくても法的な契約は成立しますが、証拠がなければフリーランスが不利になりがちです。日常的にやり取りの記録を保存し、少なくとも基本的な合意事項は明文化しておくことが、トラブル防止に直結します。
「退職届」のような書類は必要ありませんが、撤回・解除したいときは冷静かつ丁寧に意思を伝えましょう。自分を守るための契約リテラシーを身につけることが、信頼あるフリーランスとして活動するための基盤となります。