交通事故に遭った際、加害者側の保険会社から提示される慰謝料が「妥当かどうか」は非常に重要な判断ポイントです。とくに自転車と自動車の事故で被害者に過失がない場合は、正当な金額を受け取れるかどうかが今後の生活にも大きく関わってきます。本記事では、自賠責基準と裁判基準の違い、通院日数と期間の考え方、交渉の際の注意点について詳しく解説します。
慰謝料の計算方法は「3つの基準」がある
交通事故の慰謝料算出には、次の3つの基準があります。
- 自賠責基準:国が定めた最低限の保障。1日4,300円(以前は4,200円)程度で計算。
- 任意保険基準:保険会社が独自に設定する基準。自賠責より少し高めだが非公開。
- 弁護士(裁判)基準:過去の裁判例に基づく最も高額な基準。交渉や訴訟で利用される。
保険会社が最初に提示するのは通常「自賠責基準」です。これは被害者が異議を唱えなければ、そのまま支払われてしまうケースが多くあります。
「通院日数52回・通院期間250日」でいくらが妥当?
むちうちや脳震盪など軽度の傷病では、通院慰謝料の計算は「実通院日数×2」または「通院期間」の少ない方×4,300円で算出されます。
今回のケースでは。
- 通院日数:52回
- 通院期間:250日
- 自賠責基準:52×2=104日×4,300円=447,200円
保険会社が「44万円」と提示したのは自賠責基準での計算と思われます。これを「50万円にする」というのは、ある意味で“譲歩した提案”とも言えますが、それがベストとは限りません。
弁護士基準ならどのくらい増える可能性がある?
同じケースでも弁護士基準であれば、慰謝料はかなり異なります。東京地裁の基準(いわゆる「赤い本」)では、むちうちで治療期間が6ヶ月超~8ヶ月未満・通院日数が50回前後なら、慰謝料は80万円前後が目安となることもあります。
また、通院回数が少ないとされる52回も、「リハビリ目的で月8回通っていた」など事情を説明すれば評価される可能性が高いです。
示談前に弁護士に相談することで、交渉によって20万~30万円の増額が認められるケースも決して珍しくありません。
紛争処理センターや弁護士介入の効果
交通事故紛争処理センター(紛セン)では、無料で弁護士が間に入り、保険会社との示談交渉を仲介してくれます。
「紛センを使っても増額しない」と言われたとしても、それは保険会社側の誘導的な発言である可能性があります。実際には、紛セン利用や弁護士介入で増額した実例が多数あります。
費用が心配な方は、法テラスの無料法律相談も活用できます。
保険会社の「交渉トーク」に惑わされないために
「これ以上増えません」「弁護士を入れても変わりません」という言葉はよく使われますが、それは相手側の都合です。
被害者側が冷静に。
- 慰謝料の相場を把握する
- 紛センや弁護士に相談する
- 必要に応じて証拠(診断書・通院記録)を提出する
といった対応を取ることで、適正な賠償金額を受け取れる可能性は十分あります。
まとめ
今回のケース(通院250日・実日数52回・全治2週間・過失ゼロ)において、慰謝料50万円の提示は自賠責基準に少し上乗せした程度であり、弁護士基準ではさらに高額が見込める可能性があります。交渉の余地は十分にあり、紛争処理センターや弁護士への相談を検討する価値は高いといえるでしょう。納得のいく解決のためには、情報収集と冷静な対応が何よりも重要です。