道路占用工事中の作業エリアにおける道路交通法の適用範囲を徹底解説

公共工事やインフラ整備の現場で、「道路占用許可を取っているから、このエリアは道路交通法の適用外だ」といった説明を耳にすることがあります。しかし本当に、占用許可を取得した工事エリア内で道路交通法は無効となるのでしょうか?この記事では、道路占用と道路交通法の関係を法的根拠に基づいて解説します。

道路占用とは何か?

道路占用とは、道路法第32条に基づき、道路の本来の用途(通行)以外の目的で道路を使用することを意味します。例えば、電柱の設置、足場の組立、仮囲いの設置などが該当し、これを行うには「道路占用許可」が必要です。

占用許可は各自治体の道路管理者(通常は市区町村や都道府県)から交付され、その許可により一定期間・範囲で道路の使用が可能になります。

工事エリア内における道路交通法の適用の有無

道路占用許可を得たからといって、その場所が道路交通法の適用対象外になるわけではありません。道路交通法の適用は「道路であるか否か」によって決まり、道路交通法第2条第1項では、一般交通の用に供する道路を対象としています。

つまり、占用中であっても、その場所が物理的・機能的に「一般交通の用に供される状態」であれば、道路交通法が適用される可能性は十分にあります。完全に通行が制限され、封鎖されていれば、実態としての「道路性」は失われ、道路交通法の適用外となる場合もあります。

警察との調整と役割分担

実際の工事現場では、占用許可とは別に「道路使用許可」(道路交通法第77条)も必要になるケースが多くあります。これは、交通に支障をきたす可能性がある作業や設備設置に対して、警察署長の許可を要する制度です。

工事の安全確保や警備の配置、交通整理員の手配など、警察との協議が必要となるため、占用=警察への届け出不要という誤解は非常に危険です。

よくある誤解とトラブル事例

・「占用許可があるから駐車しても問題ない」と思い込んだ作業車が、実際には交通の妨げとして取り締まりを受けたケース。

・完全に封鎖しているつもりでも、歩行者の通行ルートが確保されていると判断され、工事中の通路内での事故に道路交通法が適用されたケース。

これらの例からも、現場の運用と道路交通法の解釈には細心の注意が必要です。

判断の基準は「実質的な道路性」

占用許可を受けた場所が道路交通法の適用を受けるか否かは、単に書面上の許可だけでなく、「現場の実態」によって判断されます。たとえば、

  • 完全にフェンス等で仕切られ、一般通行が遮断されているか?
  • 交通整理員がいても実際には通行車両や歩行者が通っているか?
  • 一部が通行可能で、生活道路としての機能を保持しているか?

このような視点から、道路交通法の適用対象かどうかを判断する必要があります。

まとめ

道路占用許可を受けた工事エリアであっても、必ずしも道路交通法の適用外とは限りません。道路交通法は、「道路性」がある限り適用される法律であり、占用工事であっても警察への届出や交通規制への配慮が求められます。誤解のないよう、占用と交通法令の違いを正しく理解し、現場運用に反映させましょう。

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