日常的なやり取りの中で思わず発してしまった言葉が、法的に問題になるケースがあります。特に感情が高ぶった場面での発言が後から「脅迫」とみなされることも。この記事では、離婚によって元配偶者となった人物に対して向けられた発言が、刑法上の脅迫罪に該当するのかを法律の視点から解説します。
脅迫罪の基本的な成立要件
日本の刑法第222条では、脅迫罪は「生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知した者」に対して成立するとされています。
ここで重要なのは「告知された相手」が「害されることへの恐怖」を感じること、またその告知内容が相手の心理に影響を与える程度であることが必要です。つまり、冗談や軽い言い回しでも、相手が本気で受け取れば成立する可能性があります。
脅迫罪の「親族」には元配偶者も含まれるか?
刑法上、脅迫の「対象者」には、被害者本人のみならず、被害者の親族(家族や配偶者など)も含まれます。しかし、「元配偶者」は明確に「親族」に含まれるかは法的には微妙な部分です。
一般に、離婚が成立した時点で、民法上の親族関係は終了します。したがって、離婚後の元配偶者は「脅迫罪の被害者の親族」とは扱われないと解釈されることが多いです。
それでも脅迫罪が成立する可能性があるケース
ただし、元配偶者であっても、発言の対象が本人である場合、または明らかに名指しで「殺す」などの危害を加える趣旨があり、それを本人が知った場合は、親族関係の有無に関係なく脅迫罪が成立することがあります。
特に、証拠となるLINEメッセージなどに具体的な危害の言葉が記録されている場合、元配偶者がそれを見て「恐怖を感じた」と警察に訴えれば、捜査対象になる可能性は否定できません。
実際に逮捕されるかどうかの判断ポイント
発言が脅迫罪に該当する可能性があっても、すぐに逮捕や起訴になるとは限りません。以下のような要素が考慮されます。
- 発言の具体性(実際に実行する計画があるか)
- 当事者の関係性や状況(DV等があった背景)
- 一度の発言か、繰り返されたものか
- 本人がその後、謝罪や訂正をしているか
警察や検察は、これらを総合的に判断し、逮捕や書類送検の有無を決定します。
元配偶者とのトラブルは法的相談を
もし、元配偶者との間に法的なトラブルが発生した場合は、弁護士ドットコムなどの法的アドバイスが受けられるサイトを活用するか、早めに法テラスや弁護士に相談するのが望ましいです。
個人的な感情で「殺してやりたい」などと発言してしまっても、それが実際の行動に結びつく危険性がないと判断される場合は、不起訴や警告のみで済むケースも多くあります。
まとめ:脅迫罪は言葉一つで成立しうる、慎重な行動が大切
たとえ親族でなくなった元配偶者であっても、脅迫と受け取られるような発言をすれば、脅迫罪が成立する可能性はあります。刑法は「感情」ではなく「発言の内容と受け手の恐怖」によって判断される点を理解しておくべきです。
日常のコミュニケーションでも、自分の発言が記録として残るSNSやLINEなどでは特に注意が必要です。トラブルになった場合は、冷静に法的な助言を求め、感情的な対応を避けるようにしましょう。