不貞行為によって発生する慰謝料問題は、加害者同士の責任分担が大きな争点になります。特に、どちらか一方が慰謝料を支払った後に「求償権」を行使するケースでは、法的な知識がないと混乱しやすいです。本記事では、求償権とは何か、その行使条件や裁判の可能性について、わかりやすく整理していきます。
求償権とは?加害者同士の金銭的精算権
求償権とは、共に責任を負うべき立場の一方が、被害者に全額または多くを支払った際に、他方に対して公平に分担を求めるための権利です。不貞行為では、配偶者と不貞相手の双方が共同不法行為者となり、どちらか一方に全額の慰謝料を請求できる一方で、支払った側が相手に求償できるのが通例です。
例えば、配偶者が相手女性に対して100万円の慰謝料を請求し、女性側が支払った場合、その女性は加害者である配偶者に対して「半額である50万円の求償」を求めることが可能になります。
裁判所の和解案が意味するもの
質問のケースでは、裁判所が「100万円か、求償権を放棄するなら50万円」という和解案を提示しています。これは、「支払い額を下げる代わりに、配偶者への求償権を行使しないでください」という意図を含んでいます。つまり、女性側が50万円で和解すれば、後からあなたに請求してくることはできません。
逆に100万円を支払う選択をした場合は、求償権が残り、のちにあなたに対して訴訟を起こしてくる可能性があるという意味になります。
求償訴訟の現実:通知が来ていない場合は?
求償訴訟は、あくまで相手女性が「訴えを起こすかどうか」にかかっています。現在通知が来ていないのであれば、まだ訴訟は起こされていない状態です。ただし、求償権には通常3年の消滅時効があるため、その間であればいつでも請求される可能性は残ります。
この点で、法的には「いつでも訴えられるリスク」が残っていると考えるのが現実的です。何も起こらなければ幸運ですが、法的対処は必要になり得ます。
求償金額はいくらになるのか?
実務上、不貞行為における求償額は半額であることが多いです。ただし、不貞行為の主導者が一方的だった場合や、片方に特段の悪質性があると判断された場合、分担比率が変動することもあります。
そのため、あなたが全面的に責任を認めた内容証明やLINE等の証拠がある場合は、50%を超える金額を請求されるリスクもあります。反対に相手側の責任が大きいと見なされれば、逆に求償額が低くなることもあります。
今できる対策と法的アドバイス
将来的なリスクに備えるため、以下の行動を検討しましょう。
- 相手女性の和解選択(100万か50万か)を確認する
- 可能であれば、文書で求償放棄の確認をとる
- 弁護士に相談し、訴訟対策や支払い能力に応じた対処を計画する
また、現在通知がないとしても、将来的に裁判所から訴状が届くことはあり得るため、住民票や郵便物の転送など、受け取り漏れがないようにしておくことも大切です。
まとめ:求償権は「起こされる可能性がある」リスクと向き合うこと
求償権は法的に認められた権利であり、相手が請求する選択をした場合には、あなたにもその責任が波及します。今すぐ何かされるというよりは、「請求が将来来る可能性がある」状態にあると理解しましょう。
精神的な負担も大きいかもしれませんが、落ち着いて情報を整理し、早めに弁護士へ相談することで安心と具体的な対策が得られます。