特定原動機付自転車(いわゆる「電動キックボード」など)を運転中に事故を起こしてしまった場合、特に自賠責保険しか加入していないと、どう対応してよいか戸惑う方も多いのではないでしょうか。今回は、ブレーキの整備不良が原因で相手に怪我や物損を与えてしまった場合の対処法、そして今後の流れについて、法律と実例をもとに解説します。
特定原動機付自転車とは?事故の際の法的な位置づけ
特定原動機付自転車は、道路交通法上は原動機付自転車の一種に分類されます。最高速度が20km/h以下であることや、構造上の条件を満たしていれば免許不要で乗れる車両もありますが、公道での運転には交通ルールが厳格に適用されます。
事故を起こした場合、通常のバイクや車と同様に過失責任が問われます。たとえ軽微な事故であっても、相手に怪我がある場合は人身事故として扱われ、警察への報告が義務づけられます。
自賠責保険だけではカバーできない損害とは?
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、被害者の最低限の補償を目的とした保険であり、傷害は120万円まで、死亡は3,000万円まで、後遺障害は75万円〜4,000万円の補償範囲です。
しかし、物損(例:被害者の自転車の損傷など)は一切補償されません。また、人身に関しても慰謝料や逸失利益が高額になった場合、補償しきれないケースが多いため、任意保険に未加入の加害者は自己負担が発生します。
事故後に加害者がとるべき初期対応
事故直後は、まず警察と救急への連絡が最優先です。被害者の安全を確保し、現場の証拠写真を撮る、目撃者がいれば連絡先を聞いておくことも重要です。
自賠責保険の請求に必要な書類の準備を進めるとともに、被害者やその保険会社とのやり取りには、誠実かつ丁寧に対応しましょう。口頭だけで済ませず、書面でのやり取りを残すことでトラブルを避けやすくなります。
書面のみのやり取りで注意すべきポイント
自分に保険の担当者がいない場合、被害者側の保険会社や代理人と直接やり取りを行う必要があります。その際、内容証明郵便や電子内容証明などでやり取りを記録するのが理想的です。
謝罪や損害賠償の申し出を文面に記載する際は、法的責任を明言しすぎないよう注意が必要です。たとえば「誠意をもって対応いたします」など、柔らかい表現が望ましいです。
最悪のケースとは?民事責任と刑事責任の両面から考える
事故の状況によっては、民事責任だけでなく刑事責任が問われる可能性もあります。特に整備不良(ブレーキ不具合など)は「過失致傷」または「道路交通法違反」に該当し、罰金刑や懲役刑が科されるケースもあります。
たとえば、過去の判例では、整備不良の自転車で事故を起こし、相手に重傷を負わせた場合、執行猶予付きの有罪判決が出た例もあります。こうした事態を避けるためにも、事故後すぐに弁護士など専門家への相談が有効です。
弁護士に相談するメリットと費用感
自賠責のみで対応しなければならない場合、自力での対応に限界があるため、交通事故に詳しい弁護士のサポートを受けることが強く推奨されます。法律扶助制度を使えば、費用を抑えて相談・依頼ができる可能性があります。
被害者から高額な請求が来た場合の交渉や、刑事手続きの回避なども弁護士の助言で大きく変わるため、早期の相談が事故後のストレスを軽減します。
まとめ:事故後は誠実な対応と専門家の活用がカギ
特定原動機付自転車の事故で加害者になってしまった場合、自賠責のみではカバーしきれないリスクが多く存在します。まずは誠実に対応する姿勢を持ち、必要であれば法的支援を受けることが、トラブルを最小限に抑える鍵となります。
今後の参考として、定期的な車両点検や、万が一に備えた任意保険の加入も検討することをおすすめします。