小規模工場や事業所において、複数の電力契約が存在する中で、特定の契約について長年未払いだったことに気づくケースがあります。この記事では、電力会社への報告によって過去の未払い分がどう扱われるか、また時効の適用範囲や法的責任について詳しく解説します。
電気料金の請求権には「時効」がある
日本の民法では、電気料金などの定期給付債権には5年の消滅時効が適用されます(民法第166条)。これは、契約内容に関わらず、電力会社が5年以上前の料金を請求できないことを意味します。
したがって、たとえ未払いであっても、最後の供給から5年以上が経過している期間分の請求権は消滅している可能性が高いです。ただし、供給が継続しており、直近の数年分であれば請求されることがあります。
正直に報告すれば請求される?
電力会社に対して未払いを自主的に申し出た場合、原則として未収料金の請求が行われます。これは、たとえ会社側の請求ミスであっても、電気を使用した事実=不当利得とみなされるためです。
しかし、先述のとおり過去5年より前の分については時効が成立しているため、請求があっても「時効援用(じこうえんよう)」を主張することで法的には支払い義務が免除される可能性があります。
実際の交渉での対応例
過去に同様のケースで、10年以上動力契約の未払いが続いていた事業者が、電力会社から直近5年分のみ請求され、それ以前の分については不問とされた例があります。
また、請求総額が高額になる場合には、電力会社側が分割払いや減額を提案してくることもあり、交渉次第で実務的な解決が図られることが多いです。
時効の援用とは?手続きの流れ
「時効の援用」とは、成立した時効を正式に主張することで支払義務を免除する法的手続きです。これは自動的に成立するわけではなく、債務者からの意思表示が必要です。
具体的には、以下のような方法で行います。
- 内容証明郵便で「〇年〇月以前の債権について時効を援用します」と通知
- 電力会社との交渉の中で口頭で時効の成立を伝える(証拠を残すのが望ましい)
この手続きにより、5年を超える部分の支払い義務を回避することが可能です。
未契約供給(無契約使用)というリスク
もし、契約が正式に存在していなかった場合は「無契約使用」となり、場合によっては不正使用とみなされることもあります。ただし、事業者側に意図的な隠ぺいがなければ、刑事責任に問われるケースは極めてまれです。
それでも、信義則上の観点から正当な利用料金を支払う必要はあり、時効を超えた分の免除交渉とともに、誠意ある対応が求められます。
まとめ
電気料金の未払いが発覚した場合でも、直近5年分を除いては「時効」によって請求が制限される可能性があります。電力会社への自主報告は、誠実な印象を与える一方で、支払請求の対象にもなり得るため、時効援用を視野に入れた慎重な対応が必要です。専門家への相談を含め、正確な情報と交渉をもって対応しましょう。