給与は労働の対価であり、支払いが遅れることで生活に影響を及ぼす可能性があります。では、会社側の計算ミスなどで給料が不足して支払われた場合、遅れて支払われた金額に対して「遅延損害金」は請求できるのでしょうか?本記事では、労働基準法や判例をもとに、その考え方と実際の対応方法をわかりやすく解説します。
給料の支払いが遅れることの法的扱い
労働基準法第24条では、賃金は「通貨で、直接、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うこと」が義務づけられています。つまり、給料日に全額が支払われていない場合、それは労基法違反となります。
たとえ計算ミスであっても、正当な理由とは見なされず、会社には速やかな是正と謝罪、そして状況によっては補償義務が発生します。
遅延損害金の請求は可能なのか?
結論から言うと、遅延損害金の請求は可能です。民法第419条第1項に基づき、金銭の債務不履行に対しては年利3%(2020年4月以降の法改正により)または契約で定められた利率で損害賠償請求ができます。
たとえば、10万円の不足分が30日遅れて支払われた場合、以下のような計算になります。
100,000円 × 0.03 ÷ 365 × 30日 ≒ 約246円
金額は少額でも、労働者の権利として主張することは可能です。
実際の請求方法と注意点
遅延損害金を請求する場合、まずは会社側に口頭または文書で申し出るのが基本です。穏便に済ませたい場合は、請求額の明細とともに丁寧な説明を添えるとよいでしょう。
例:
「〇月の給与に10万円の不足があり、×日に支払いがありました。遅延日数が◯日あるため、遅延損害金として○○円の支払いをお願いいたします。」
なお、会社との関係性や就業規則によっては、相談したうえで対応方針を決めるのも一つの方法です。
労働基準監督署や相談窓口の活用
会社が話し合いに応じない場合や、繰り返し同じ問題が起きている場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。給与の未払いや遅延については、調査対象になりやすく、是正勧告が出される可能性もあります。
また、厚生労働省の総合労働相談コーナーや、法テラスの無料相談も活用可能です。
実例:給与遅延で損害金を請求したケース
あるケースでは、従業員が2か月連続で支払い遅延に遭い、2度目の遅延について法的根拠を添えて遅延損害金を請求。最終的に会社側が謝罪し、遅延利息分を支払った上で、今後の支払い体制も改善されました。
このように、正しい知識をもって行動すれば、改善へつながることがあります。
まとめ:遅延損害金は正当な権利
給料の支払いミスによる遅延があった場合、たとえ会社側の単純ミスであっても、遅延損害金の請求は労働者の正当な権利です。少額であっても、今後の再発防止や会社への意識改善にもつながります。まずは冷静に事実を整理し、必要に応じて専門機関への相談も検討しましょう。