交通事故の現場に偶然遭遇したとき、私たちはどのように行動すべきなのでしょうか。被害者や加害者ではない第三者である「目撃者」としての対応には、法律上の義務や社会的責任、そして道徳的判断が関わってきます。本記事では、交通事故の目撃者として適切な対応方法や、通報の必要性について詳しく解説します。
交通事故の通報義務は誰にある？
日本の道路交通法では、交通事故を起こした当事者（加害者・被害者）には警察への通報義務が課されています（道路交通法第72条）。特に人身事故の場合は通報が必須で、怠ると「報告義務違反」として罰則を受ける可能性もあります。
一方、目撃者（第三者）には法律上の通報義務はありません。したがって、今回のように「声をかけた後に立ち去った」という行動自体に法的な問題は基本的に生じません。
目撃者として通報すべき状況とは？
通報義務はないとはいえ、次のような場合には目撃者が通報することが強く推奨されます。
- 事故の当事者が怪我をしているが、通報していない様子
- 当事者がパニック状態で通報できそうにない
- 運転手が逃走しようとしている（ひき逃げの可能性）
- 事故当事者が「通報しなくていい」と言い張っている（隠蔽の意図がある可能性）
このような場合、通報をしないことで人命に関わる問題が発生したり、当事者がトラブルに巻き込まれたりする可能性もあるため、第三者でも積極的に行動することが望ましいです。
実際に事故を目撃した場合の対応ステップ
事故の場面に居合わせた場合、以下のように行動すると安心です。
- まずは安全な場所から現場の確認を行う（自分の安全を確保）
- 「大丈夫ですか？」と声をかけ、負傷の有無を確認
- 当事者が混乱している、通報する様子がない場合はすぐ110番通報
- 軽微な事故でも、念のためナンバーや事故状況を記録しておく
- 必要があれば、警察が到着するまで現場に留まり、事情を説明する
特に通報後に「目撃者としての証言」が求められることがあるため、覚えている範囲で情報を整理しておくことが大切です。
通報しなかったことで責任を問われることは？
目撃者が通報しなかったことで、後に責任を問われるケースは基本的にほとんどありません。ただし、以下のようなケースでは注意が必要です。
- 事故後に関係者として名乗り出ず、虚偽の証言をした
- 目撃者でありながら、情報を隠蔽するような行動を取った
つまり、「何もしていない」ことよりも、「事故の隠蔽に加担するような行動」をとることで問題が発生します。
次回以降に備えるためにできること
今後もし交通事故を目撃するような場面に出くわした際、冷静に対応できるよう、以下の準備をしておくとよいでしょう。
- スマートフォンに緊急通報番号（110）を登録しておく
- 事故現場を目撃した場合の対応マニュアルをメモしておく
- 身近な人にも、「第三者でも通報してよい」ことを共有する
社会全体で事故被害を減らすためにも、目撃者の存在は大きな意味を持ちます。
まとめ
交通事故の目撃者には法的な通報義務はありませんが、状況によっては通報することで命を救うことや、事故処理を円滑に進めることに繋がります。「声をかけたけど立ち去ってしまった」と後悔している場合でも、それだけでも大切な行動だったといえます。今後の備えとして、事故を目撃した際の行動をあらかじめ整理しておくことが、自分と他者を守る一歩となります。