元本確定後の根抵当権移転登記における持分不記載の理由とは?司法書士試験にも出題される実務のポイント

根抵当権に関する登記実務では、元本の確定前後によって登記事項や取り扱いに違いが生じます。とりわけ、元本確定後の相続による根抵当権移転登記については、「相続人が複数であっても持分の記載を要しない」とされる点に疑問を持つ方も少なくありません。この記事では、この取り扱いの根拠と理由を解説しながら、抵当権移転登記との比較も交えて理解を深めていきます。

根抵当権と抵当権の基本的な違い

抵当権は特定の債権を担保するものであり、登記上はその債権額が明示されます。一方、根抵当権は継続的な取引から生じる不特定多数の債権を担保する目的で設定され、元本の確定まではその額が確定していません。

この違いにより、抵当権の移転登記では共有状態を明確にする必要があるため持分の記載が求められるのに対し、根抵当権についてはそれが不要とされる背景があります。

元本確定後の根抵当権の性質と登記の扱い

元本が確定すると、根抵当権は新たな債権の追加ができなくなり、実質的に「抵当権に近い性質」を持つようになります。ただし、法的には根抵当権のままであり、抵当権に転化するわけではありません。

したがって、移転登記においてもその性質上「持分の登記」は不要とされており、実務上も申請書には相続人の氏名のみを記載すればよいことになっています。

相続が関与する根抵当権移転登記の実務

たとえば、根抵当権者Aが亡くなり、法定相続人BとCが相続する場合、元本確定後であっても「B・Cへ移転」と記載するだけで足り、「Bが1/2、Cが1/2」といった持分の記載は不要です。

これは、法務省の通達および登記先例にも明記されている取り扱いであり、全国の法務局で統一された実務となっています。

抵当権との違いに基づく記載義務の有無

一方、抵当権の移転登記では相続人が共有で取得した場合、共有状態が登記に反映されるため、具体的な持分(例:1/2、1/2など)の記載が義務付けられています。

つまり、根抵当権では「権利の共有を登記簿上に表す必要がない」という法的整理がなされており、この点が抵当権との実務上の大きな違いです。

過去の司法書士試験における出題と対策

今回のような問題は、司法書士試験においては「実務の細かい例外」を問う形で頻出しています。特に、抵当権との違いや通達に基づく取扱いを正確に理解しておくことが得点につながります。

出題の意図としては、条文の文言や理論だけではなく、登記実務の運用をきちんと把握しているかが問われていると理解するとよいでしょう。

まとめ:なぜ持分記載が不要なのか

元本確定後の根抵当権は、その性質上、実務上は抵当権に近くても法的にはあくまで「根抵当権」であり続けます。このため、法務省の通達により相続による移転登記では持分の記載が不要とされており、これは登記実務上も徹底されています。

司法書士試験でも問われる重要ポイントですので、抵当権と根抵当権の実務上の違いを明確に押さえ、混同しないようにしましょう。

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