製品に「日本製」と書かれていると、多くの人は日本で作られた高品質なものだと信頼します。しかし実際には、部品の大半を海外で製造し、日本ではタイヤの取り付けなど一部だけを仕上げたケースでも「日本製」と表記されていることがあります。本記事では、スーツケースなどの製品における「日本製」表示の基準や法的ルールを解説します。
「日本製」と表示できる法的な基準
日本における「原産国表示」の基準は、主に「関税法」と「不正競争防止法」に基づいて判断されます。原産国表示で重要なのは「実質的な変更が行われた国」です。これを「最終加工地」や「実質的変更地」とも呼びます。
つまり、製品がどの国で根本的な製造工程を経たかがポイントになります。たとえば、スーツケースの大部分が中国で作られ、日本でタイヤだけを取り付けた場合、それが「実質的変更」に当たるのかどうかが判断基準です。
スーツケースにおける「実質的変更」とは?
スーツケースは複数の部材から成り立っており、外装、ファスナー、内装、ハンドル、キャスターなどが含まれます。これらのパーツが海外で完成しており、日本ではキャスターを取り付けただけであれば、それは「単純な組み立て」にすぎず、通常は「日本製」とは言い難いとされます。
しかし、製品の完成度や市場の慣習によって判断が分かれるケースもあるため、消費者庁や税関が個別に判断する余地があります。実際に法的トラブルになった例もあるため、表示には慎重を要します。
「日本製」として販売される実例
ある有名ブランドでは、スーツケースの外装シェルを台湾で製造し、最終的に日本国内で組み立て・品質検査を行った上で「日本製」として販売していました。これは、「最終的な製品としての機能を完成させる工程」が日本で行われていたため、適法とされました。
一方で、すでに完成している状態の製品にラベルやタイヤを取り付ける程度では、「日本製」の表示は不適切とされる可能性が高いです。
誤表示のリスクと企業責任
仮に不適切な「日本製」表示がなされていた場合、景品表示法違反として、企業には措置命令や課徴金のリスクがあります。特に近年では、消費者庁が表示に関して厳しい監視を強めており、ブランドイメージにも大きな影響を及ぼしかねません。
過去には、「日本製」と表示していた衣料品ブランドが、実際にはほとんどの工程を中国で行っていたため、改善命令を受けたケースもあります。
消費者としてできること
購入時には「日本製」の表示だけでなく、製品タグや公式サイトで製造工程の詳細を確認する習慣を持つことが重要です。「最終仕上げ:日本」などの補足表示があれば、より透明性が高く信頼できます。
また、疑問がある場合は消費者庁や国民生活センターに相談することも可能です。購入後に表示と実際の産地が異なっていた場合、返品や表示是正の申し入れを行うことができます。
まとめ
「日本製」の表示には、明確な基準と法律が存在し、それを満たさない表示は違法となる可能性があります。スーツケースのように多くの部材で構成された製品では、どの工程をどこで行ったかが非常に重要です。日本での仕上げ作業が本当に「実質的変更」と言えるのか、消費者も目を光らせる時代です。