刑事訴訟法の学習において、犯罪被害者等に関する制度は、実務と深く関わるため出題頻度も高く、正確な理解が求められます。特に「告発」「付審判請求制度」「被害者参加制度」などの制度は似て非なる内容を含んでおり、選択問題での誤答を招きやすいテーマでもあります。この記事では、これらの制度の基礎から違いまでを整理し、理解を深めていきます。
捜査機関に対する告発とは何か
まず、告発は犯罪の被害者または第三者が、犯罪事実を捜査機関に通報し、捜査開始を求める手続きです(刑訴法239条)。告訴と異なり、告発人が処罰感情を示す必要はありませんが、犯罪の端緒として機能します。
たとえば、横領罪の事実を会社の第三者従業員が警察に通報した場合でも、それは告発となり、これが捜査の契機になることがあります。よって、「告発は捜査の端緒になりうる」という記述は正しいと評価できます。
付審判請求と国家訴追主義の関係
検察官が不起訴処分をした場合、一定の公務員職権濫用等の罪に限って、被害者などが裁判所に「付審判請求」することが可能です(刑訴法262条)。
しかし、この制度はごく限定的であり、また裁判所が審査し、付審判決定を出す必要があります。指定弁護士による起訴が行われることもありますが、原則として国家訴追主義の枠内とされており、「例外」と断じる表現には誤解の余地があります。このため、試験問題の②は不適切な表現とされることが多いのです。
被害者参加制度とは何か
被害者参加制度とは、一定の重大事件において、犯罪被害者等が刑事裁判に参加し、被告人質問などを行える制度です(刑訴法316条の33以降)。
たとえば、傷害致死や性犯罪、交通死亡事故などの事件で、被害者遺族が参加を希望し、裁判所が許可すれば、実際に法廷で発言できる機会が認められます。この制度は、犯罪被害者の心情や意見を訴訟に反映させるための重要な仕組みであり、「一定の事件で被害者が公判期日に出席する」という記述は正しいものです。
過去問の選択肢を検討する
本記事の導入で挙げた3つの選択肢を、ここであらためて整理します。
- ①「捜査機関に告発でき、これは捜査の端緒にもなる。」→適切
- ②「不起訴処分に不服がある場合、付審判請求でき、国家訴追主義の例外となる。」→不適切
- ③「一定の事件で、被害者参加制度を利用して、公判期日に出席することがある。」→適切
このように見ると、②が不正解であり、①と③は共に正しい表現であることがわかります。「最も適切なものを1つ選べ」という設問形式の場合、細かい文言の正確性や制度の限定性などを理由に、①が正解とされる可能性が高いですが、③も内容的には正確な記述であり、問題文のニュアンスによっては紛らわしい印象を与えます。
まとめ:刑訴法の制度は条文と判例のバランスがカギ
刑事訴訟法では、用語の意味を正確に押さえることが重要です。告発は捜査の端緒となりうること、付審判請求は例外的制度であること、そして被害者参加制度の対象事件や制度趣旨などをしっかり理解しておくと、試験問題でも混乱せずに正解へとたどり着けます。