歩行中に家族が交通事故に巻き込まれたにもかかわらず、加害者が任意保険に加入していなかった——このようなケースでは、被害者側に多大な負担がかかることがあります。この記事では、事故後に加害者が任意保険未加入だった場合に使える制度や、被害者が泣き寝入りしないための具体的な対応策を解説します。
自賠責保険とは?最低限の補償を受けられる制度
任意保険に加入していなくても、自動車を運転する際は法律で自賠責保険(強制保険)の加入が義務づけられています。加害者が任意保険に入っていない場合でも、自賠責保険から次のような補償を受けることが可能です。
- 傷害:上限120万円まで
- 後遺障害:等級に応じ最大4,000万円
- 死亡:上限3,000万円
まずは加害者の自賠責保険会社に直接連絡を取り、被害者請求という形で補償申請を進めましょう。
被害者請求とは?自分で直接補償を請求できる仕組み
加害者が自賠責保険の手続きをしない、または無視する場合、被害者自身が直接保険会社に請求する制度が「被害者請求」です。
必要な書類は以下のとおり。
- 診断書・診療報酬明細書・領収書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 本人確認書類・振込口座情報
この手続きを使えば、加害者の経済状況や対応に左右されずに治療費や通院費の一部を回収できます。
民事・刑事・行政の3つの責任を把握しておく
加害者が「わざと轢いたわけではない」と主張しても、交通事故には以下の3つの責任が発生します。
- 民事責任:損害賠償(治療費・慰謝料等)
- 刑事責任:過失運転致傷罪など
- 行政責任:免許停止や取り消し
このうち民事賠償は加害者の任意保険未加入であれば本人負担になります。相手の資力が乏しい場合でも、内容証明郵便で請求書を送付し、少額訴訟や通常訴訟などの手段も検討可能です。
弁護士費用特約を使って法的手段に備える
ご自身やご家族が加入している任意保険に弁護士費用特約が付帯されていないかを確認しましょう。これは「相手が無保険だった場合のため」に使える特約で、自己負担なしで弁護士に依頼できることが多いです。
弁護士が入ることで、慰謝料の算定や後遺障害の等級認定にも専門的に対応してくれ、相手との交渉もスムーズに進められます。
実例:無保険車事故で立替が不要になったケース
あるケースでは、加害者が任意保険未加入で自賠責のみ加入。被害者側は当初、入院費や診察代を立て替えていましたが、被害者請求を活用することで医療費の約8割を回収。その後、弁護士費用特約を使って損害賠償請求を起こし、加害者から分割で慰謝料を回収しました。
こうした対応は専門知識が必要ですが、正しいステップを踏めば被害者救済は十分可能です。
まとめ:任意保険未加入でも「泣き寝入り」せず行動を
加害者が任意保険に加入していない場合でも、自賠責保険による最低限の補償や被害者請求制度、さらには弁護士費用特約などを活用することで、泣き寝入りを避けることが可能です。
感情的なやり取りに巻き込まれず、証拠を整理し、専門機関に相談しながら法的に正当な補償を受けることが大切です。「どうせ損をする」とあきらめず、一歩ずつ対応を進めましょう。