VTuberの前世と中傷行為:名誉毀損やプライバシー侵害が問われる場合と開示請求の現状

インターネット上で活動するVTuber(バーチャルYouTuber)の人気に伴い、「前世(中の人)」と呼ばれる実在の人物が特定されるケースも増えています。こうした実名や経歴を暴露したうえで誹謗中傷を行う行為は、法的にどのように評価され、どのような措置が取られるのかを解説します。

VTuberの前世を晒すことはプライバシー侵害に該当するか

「前世」に関する情報が本人の公表によるものでない限り、それを無断で特定・公開する行為は、プライバシー権の侵害にあたる可能性があります。特に、当該人物がリアルな氏名・経歴を伏せて活動している場合は、その秘匿性が高く評価されやすいです。

例として、過去に匿名掲示板でVTuberの前世を実名で晒し、誹謗中傷を書き込んだユーザーが、名誉毀損およびプライバシー侵害で開示請求された事例があります(詳細は後述)。

名誉毀損として民事責任が問われるケース

VTuberの前世とされる人物に対して、「○○は過去にトラブルを起こした」などの虚偽の情報を流布した場合、名誉毀損に該当することがあります。名誉毀損はたとえ事実であっても、公然と人の社会的評価を低下させれば成立するため、慎重な発言が求められます。

実際にあった事例では、X(旧Twitter)上でVTuberの「前世」への誹謗中傷ツイートが多数投稿され、本人がプロバイダ責任制限法に基づいてIPアドレス開示請求→発信者情報開示→損害賠償請求に至った例も存在します。

誹謗中傷に対する開示請求と裁判例

代表的な判例として、東京地裁令和3年(ワ)第〇〇号事件では、匿名掲示板上でVTuberの前世とされる女性に対する人格攻撃があり、プロバイダに対し発信者情報開示が命じられました。

このように、匿名であっても法的措置は可能です。弁護士による仮処分申立て→裁判所命令→プロバイダ開示→損害賠償請求という流れが一般的です。

VTuberの運営側による対応と警告

大手VTuber事務所では、「前世情報に関する発信は控えるように」と公式ガイドラインに記載していることもあります。たとえば、にじさんじやホロライブなどは、「演者のプライバシーを侵害する行為は法的措置をとる場合がある」と明言しています。

このようなガイドラインを無視し、中傷・暴露行為を行った場合、所属事務所からも直接的な民事訴訟や刑事告訴がなされる可能性があります。

実際に開示請求を受けたユーザーのその後

開示されたユーザーには、損害賠償請求(数十万~100万円)が提起されることがあります。さらに、弁護士費用や示談交渉の負担も大きく、経済的・社会的損失を伴うことは少なくありません。

和解に至ったケースでも、謝罪文の提出やSNSアカウントの削除が求められる場合もあります。軽い気持ちで書き込んだ投稿が、大きな責任を伴う結果を招く可能性があります。

まとめ:匿名でも責任は免れない

VTuberの「前世」に関する情報を暴露し、誹謗中傷を行った場合には、プライバシー権の侵害名誉毀損に基づく民事責任が生じる可能性があります。開示請求によって発信者が特定され、損害賠償や謝罪を求められる事例も多数存在します。

表現の自由が認められている一方で、他者の人格権を侵害しないという責任も伴います。インターネット上での発言には、慎重さと配慮が必要です。

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